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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

楽天銀行の口座凍結措置は杜撰ではないか?


けっこう話題になっていたようです。

http://yonezo.biz/?p=4405


楽天銀行なんて使いたいとも思ったことがないから、全然知らんかったわ。


すると、あの山本一郎がコメント欄に降臨し、記事を放り込んでいったようだ。


http://b.hatena.ne.jp/entry/kirik.tea-nifty.com/diary/2015/09/post-9b53.html


山本一郎からすると、楽天銀行が口座凍結するのは何ら問題なく、利用者かオークション運営側などに責任があるかのような物言い。
本当かよ?



眉唾っぽく感じたので、少し調べてみました。当方の素人見解ですが、一応書いておきます。


1)基本的に口座凍結措置は、ハードルが高い

全銀協の資料があったので、見てみました。ただ、ちょっと古い。7年くらい前です。


http://www.caa.go.jp/planning/pdf/1115siryou1.pdf


原則として、外部からの情報提供というのが重要のようです。捜査機関や弁護士などですね。犯罪に利用されている可能性が高い、という指摘を受けないと銀行側の判断だけでは、中々難しいということではないかと。



2)振り込め詐欺の被害救済を目的としている


現在でも下火にならない詐欺事件ですが、振り込め詐欺は以前より困難になってきたのではないかと思います。現金を送らせる手口に移行してきているといった報道があったように思います。

で、口座の取引停止が条文で規定されている法律は、数が少ないのです。代表例が振り込め詐欺に関する以下の法律で、取引停止の法的根拠となっています。


『犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律』


○第三条

 金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。

2 金融機関は、前項の場合において、同項の預金口座等に係る取引の状況その他の事情を勘案して当該預金口座等に係る資金を移転する目的で利用された疑いがある他の金融機関の預金口座等があると認めるときは、当該他の金融機関に対して必要な情報を提供するものとする。



つまりは、犯罪利用の疑いが濃厚である、ということが要件となっているわけで、普通は捜査機関からの情報提供となろう。
他行にある犯罪口座との取引があるということなら、楽天銀行宛てにその情報提供がなされる、ということであろう。

仮に、向うの口座が停止措置となっているからといって、そこから楽天銀行の口座まで犯罪が明らかでないのに停止されるというのは、どうなのだろうか?

犯罪に関係しているのではないか、ということを当局に報告義務があるからといって、全部を疑いの段階で停止措置を取るというのは妥当とも思われないわけである。


3)マネーロンダリングや組織犯罪対策の法律での停止措置は手続が別

暴力団対策とか、その他の犯罪やテロ対策という側面もあることはある。


犯罪による収益の移転防止に関する法律

この法律では、取引時確認事項が決められており、簡単に言えば、顧客の身元を明白にしろというものである。

○第五条  
特定事業者は、顧客等又は代表者等が特定取引等を行う際に取引時確認に応じないときは、当該顧客等又は代表者等がこれに応ずるまでの間、当該特定取引等に係る義務の履行を拒むことができる。


顧客が確認を拒否したら、取引に応じないことができるよ、ということであって、全部を停止してよい、ということにはなっていないし、少額取引その他除外規定もある。
また、顧客が虚偽申告ないし虚偽の告知を確認事項で行っている場合には、厳格な取り扱いもやむなし、ということになっているだけで、普通の人ならば停止措置を食らうようなことはないだろう。


○第八条  
特定事業者(第二条第二項第四十三号から第四十六号までに掲げる特定事業者を除く。)は、取引時確認の結果その他の事情を勘案して、特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあり、又は顧客等が特定業務に関し組織的犯罪処罰法第十条 の罪若しくは麻薬特例法第六条 の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定めるところにより、政令で定める事項を行政庁に届け出なければならない。

2  特定事業者(その役員及び使用人を含む。)は、前項の規定による届出(以下「疑わしい取引の届出」という。)を行おうとすること又は行ったことを当該疑わしい取引の届出に係る顧客等又はその者の関係者に漏らしてはならない。

(以下略)


この届出を行うということは、捜査機関が捜査をするということを前提としているわけだ。楽天銀行では、犯罪利用が膨大に存在する、ということなのか?だとすると、口座開設時の、審査に問題があったということであって、楽天銀行の監督はどうなっているのかということになるわな。


組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 』で没収する場合であっても、手続は法に規定される通りに実施する必要がある。基本的には裁判所命令が必要。

なので、楽天銀行が口座凍結というか、取引停止を実行しているのは、どういう権限なのかはよく分からない。



4)民法上ではどうなのか?


一般的に、預金は消費寄託契約と言われるので、その規定となる。


(消費寄託)
○第六百六十六条  
第五節(消費貸借)の規定は、受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。

2  前項において準用する第五百九十一条第一項の規定にかかわらず、前項の契約に返還の時期を定めなかったときは、寄託者は、いつでも返還を請求することができる。


いつでも返還請求できる、となっており、返還がどの程度遅延しても許されるか、というのは不明である。ただ、一般的な取引慣行上、銀行預金の払い戻しが一定の営業時間内に行われてきたのであるから、その取引慣行に従わない場合には、その合理的理由がなければおかしいだろう。


はっきり言えば、楽天銀行の措置は、意味不明であり、対応が杜撰であるとしか思われない。
届出義務があっても、それは当該口座の完全取引停止を意味するものではなかろう。ATM取引や少額取引など除外されうる場合もあるかもしれないのに、それも不可とは理解に苦しむ。


例えば銀行側の運用上の都合で、払い戻しが停止されているのではないかと勘繰られたら、返答に困るだろう。

このような銀行を野放しにしておく金融庁も、どうなっているのか。
政府の産業競争力会議の一員だから手加減でもしているのかと金融庁が責められるのではないか?


こんな銀行は初めて見たわ。