怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

平気で嘘をつく政府及び法務省訟務局の自己矛盾

辺野古埋立について、安倍政権が代執行訴訟を提起したにも関わらず、裁判所の和解案を受諾することになったわけであるが、これにより、国の主張が徹頭徹尾デタラメであった、ということが明らかになった。


裁判での争点の一つと言われていたのは、知事の取消処分が妥当なのかどうか、ということであった。

国側は、これまで何と言ってきたか?
(知事の)「取消処分は違法だ」
「一度承認したものは、取り消せない」
だったであろう?

ところが、である。

何と、国交省は執行停止の決定を取り消したのである。おかしいですね。
国は、一度出した授益的処分は原則として取消できないことを、最高裁判例まで持ち出して自己の正当性を主張していたではないか。その理屈は、どこに行ったのだ?

取り消した場合と取り消さなかった場合の不利益の比較考量により、高いハードル(笑)を超えないと取り消せないと、準備書面で主張していたではないか。

15年11月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/6285ad6c968ae5b68fe319db1ccd4eeb

(因みに、拙ブログでは、処分は取消できる、と言ってきましたよ)


和解案を受け入れたので、執行停止を取り消したんだ、という言い訳をしたところで、国が執行停止を決定しこれを実施したこと、決定通知書の存在、これらは消すことができないものである。事実として、永久に残ったのだ。

少なくとも、国側主張の言い分が正しいとしてこれに沿うなら、執行停止決定の取消は処分であって、準備書面で述べたように取消しない不利益が上回らない限りは「取消できない」ものである。これが国自身の主張を取り入れた場合の対応である、ということだ。執行停止が取り消せる、ということは、執行停止を維持する場合の不利益と執行停止を取り消す場合の不利益を比較してみれば、前者の方が「不利益が大」である、ということだ。

執行停止をしてた国が、執行停止を維持してる方が不利益が大きい、と認めたということである。おかしな話だ。
事業者が審査請求や執行停止申立てを取り下げた場合においても、執行停止は職権で実施可能である(行政不服審査法第34条第2項)ので、取り消す必然性などないと言える(法34条4項適用の場合においても、2項は除外されないので職権で執行停止を維持できる)。
国が決定した執行停止が本当に正しかったのであれば、取り消すことなどあり得まい、ということだ。先行する事業者の申立てが消滅したので、執行停止する利益が存在しないから取り消したんだ、ということであれば、それでもいいが、矛盾を解消できることにはならない。

国交大臣が沖縄県知事宛てに、「承認取消処分」を撤回するよう求める、ということは、今もって「知事のなした埋立承認の取消処分は間違っている」という主張を維持しているのでしょう?
ならば、執行停止が維持されて当然というのが、普通の見解なのではないのかね?国交大臣の出した執行停止の「決定を取り消し」た上で知事に承認取消処分を改めよ、と求めている、その理由を説明できるかね?

知事の出した「取消処分」は生きており、消えるわけではないのだよ。政府見解は「知事の処分は間違ってる」というものだから、執行停止を取り消す理由を説明できなければならない。それは、訟務局が言い張った、「不利益の比較考量」によってのみ説明されなければならず、執行停止決定の時に挙げた理由は崩壊する(笑)。



行政不服審査法 第三十四条

審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

2  処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をすることができる。

3  処分庁の上級行政庁以外の審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取したうえ、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をすることはできない。

4  前二項の規定による審査請求人の申立てがあつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。

5  審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。

6  第二項から第四項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によつて目的を達することができるときは、することができない。

7  執行停止の申立てがあつたときは、審査庁は、すみやかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。



それから、執行停止の理由について、農水省の決定でも、国土交通省の決定でも同様に、34条4項に基づいて、「重大な損害」と「緊急性」(=緊急の必要があると認めるとき)を理由を挙げて指摘、主張していたものである。裁判においても、執行停止は正当である、との主張をしてきたわけだ。


ならば、お尋ねしよう。
執行停止が取り消されるということは、どういうことを意味するか?
それは、「重大な損害」と「緊急性」の要件を満たしていなかったものだ、ということを必然に意味する。
「重大な損害」を蒙るから回復不可能なので、それを回避できる唯一の方法が執行停止、ということなんですよ。執行停止をしなくてもいい、という状態ならば、これは「重大な損害」要件に該当してない、ということです。それとも、緊急性は備えていなかった、ということになりますよ?
「重大な損害」でもなかった、或いは、そんなに言うほど「緊急」でもなかった、ということなら、執行停止決定の理由は嘘を言った、ということなりますよ?
おまけに、準備書面(or反論書?)でも言ってきた「重大な損害なんだ、緊急なんだ」だから工事を続行しなければならないんだ(=知事の処分を執行停止)、という言い分は、真っ赤な嘘だったと認めたことになるのですよ?
(差止め訴訟でありがちな、取消訴訟で取消処分が出て被害が回避可能な程度の損害は、回復不可能な「重大な損害」に該当しないよ、という裁判所の見解は今後どうするんだね?)


このような、物言いをペテンと呼ぶに相応しいのではないですか?(笑)

元検察とかいう人間であっても、ペテン師もどきはザラに見かけるので驚きはしませんが、ここまでその場しのぎの、ご都合主義となれば、国の言い分は到底信じることはできませんね。


要するに、

・執行停止を決定した際に挙げていた理由は、嘘だったと認めたことになる

・昭和43年最高裁判例を引いて主張していた授益的処分の取消に関する言い分は、デタラメだったと認めたことになる
(それとも、不利益の大きさ比較が完全に間違っていた、と認めるか?)


矛盾なく説明できるなら、してみて>訟務局