怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

米国は日本主導の「ASEAN+6」を怖れた〜2

昨日の続きです。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/special/global/epa/17/epa-s.pdf

この議事録の、ACCJのレイク会長の発言から、拾ってみる。
(青字が引用部)


『○少紱メンバー
レイク会長と本田部会長に1つずつ質問がある。
レイク会長の資料の 12ページ目の“Dock and Merge”やP−4というのは初めて聞いた。APECでFTAAPを最初に提言したのが、このシンガポール、チリ、ニュージーランドであり、ほとんど同じメンバーがP−4をつくって、太平洋横断型のパートナーシップというものを提案していると今、知ったけれども、このFTAAPと“Dock and Merge”との関係というのはあるのか。P−4はFTAAPと別の道を選んでいるのか。 』

という問いに対するレイク会長の回答が以下。

別の道を選んでいる。そして、前の 11ページの図をご覧いただくと、私が理解する限り、APECでのアジア・太平洋自由貿易圏というものは大きく長期的な目標で、不可能に近いかもしれない。なぜなら、ロシアのようなWTOのメンバーでもない国が入っているためだが、その地域で自由貿易圏をつくろうということをしっかりと目標にするという動きに、米国政府も賛成、または提案を事実上したのは、これはASEAN+3、+6に対するリアクションである。ASEAN+3、+6で、全く米国がそこにないアジアの枠組みがつくられることが、全く差別が行われないということでつくられる可能性も勿論あるわけだが、安全保障上の展開をして、安全保障の部分では米国がアジアの安定に貢献するけれども、経済の部分では除外されて、そこで枠組みがつくられるということは、アメリカ政府の利益に反するという判断をし、そしてアジア・太平洋地区で自由貿易圏をつくろうというゴールをまず掲げた。

でも、勿論それだけではなく、二国間の協定を結んでいくということで、いろんな協定も結ばれていく上で、P−4というのはP−4として、既に自由貿易圏をつくっている国々が、そこで更に金融と投資の部分で、まだ締結されていない交渉をしているところに、2月4日に発表した文書によれば、参加をして、その部分でまずビルディング・ブロックというレンガを1つつくることができれば、P−4諸国と自由貿易協定も結ぶことはあり得る。どちらにしろ、それはここに書かれているような、アジア・太平洋地区で展開する上での重要なステップの一環としても考えているんだと、単に二国間やその国々との関係だけではなくて、アジア・太平洋地区の経済統合、そして今後成長し続けるだろうという大事な地域であるからこそ、そのイニシアティブを展開するんだという判断なのだと思う。

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ここでは、APEC全体の貿易協定は事実上「不可能に近いかもしれない」という感触が述べられている。そこには、中露の問題というのが存在するからである。

ロシアはWTO加盟をようやく果たしたが、実際のところ、中国が積極的に参加するとは思われない。
少なくとも、レイク会長から見た米国政府の認識というものは、

FTAAPとP-4は別の道を選んでいる

であり、あくまで「ASEAN+3、+6」へのリアクションである、と。
アメリカがアジア地域からの経済的排除されるのを回避する為に、まずは「ビルディング・ブロック」と。要するに、アメリカ様の仲間を「囲い込み」だ、と。そういう目論見で始められたものだということである。


次に行こう。

『○少紱メンバー
このP−4に参加する国というのは、貿易通商上あまり大きなインパクトがない国が入っておって、そのP−4が提案した太平洋横断型戦略的経済パートナーシップにアメリカが後押しするというイメージについてであるが、一昨年のハノイのAPECの首脳会議で、アメリカは大合唱をし、FTAAPとして大統領も国務長官もおっしゃった。そして、APEC実務者たちが1年間勉強して、昨年のシドニーの会議ではロングターム・パースペクティブとしてFTAAPを考えましょうということで、かなりトーンダウンした。それに代わるものを“Dock and Merge”として出してきたというイメージか。』

ここで重要なことは、06年ハノイでのAPECアメリカが「急に大合唱を始めたFTAAP」とされていることだ。その実現可能性は乏しい、ということで、それ以後「トーンダウン」してしまった、ということであろうと思われる。

これに対するレイク会長の回答は以下。

長期的にはアジア・太平洋地区が同じ貿易ルールで展開されるエリアになることがゴールだとすれば、そこに到達する最も重要なステップとして、できるだけ包括的なWTOルール上、整合性が最も高い、カバレッジが高いFTA、つまり韓国と結んだような、シンガポールと結んだような、オーストラリアと結んだようなFTAがどんどん増えていくことが、FTAAPの実現に重要なブロックになっていくだろう。その意味で、これも重要なことだと思うが、最初から包括的な交渉でないのにもかかわらずP−4に、金融と投資の部分で入ったということである。これについて、直接確認はしていないので、私の単なる推測だが、1つの米国通商政策の深化であると思う。つまり、最初はとにかく全部テーブルの上に乗せなければお話はしませんというようなことが言われていた部分が過去にあったと思うが、そうではない展開をここでしたのではないか。それは全然違うから誤解しないようにと後で言われるかもしれないので、気を付けて発言しなければいけないが、少なくともそういうふうにも読める。なぜそれが重要かというと、それはFTAAPの実現だけではなくて、アジア・太平洋地区の経済成長、そして中国との関係を含めて、その展開が重要だという判断をしたのではないかと考えることができる。

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米国が希望していたのは、シンガポール、豪州、韓国といった国々とのFTAというレベルである。P-4は、その為の道具であった。

かといって、その水準をFTAAPで達成できるなどという、超楽観は米国サイドとしては抱いてはいないだろう、ということだ。


当方の通商関係の知識は全くなかった。これは、反省している。
だが、日本でのTPP推進派は、それ以上に無知なのではないかと心配になる。


中国は、既にASEANとのFTAが発効している。これは、日本も同じだ。つまり、現時点では、アジア圏の中心的存在であるASEANを繋ぎ手として、

 日本―ASEAN―中国

と、間接的に「FTAで連結されている」と言っても過言ではないのである。これが、実現可能性が最も近い、という点で、ASEAN+3とか+6が有力な理由だ。中国はASEANとの合意に至っていて、その水準であれば受け入れ困難ということは、想定し難い、ということなのだから。

後は、韓国の態度がどうなのか、ということで、もし韓国は入らないと言うのであれば、除外しても何ら問題ないだろう。

残る、豪州、NZ、インドなどは、メリットが大きいと判断すれば入ってくるものと思う。

豪州は、輸出相手国として中国が最大なので、アメリカが豪州に猛烈ラブコールを送っていたのは、そういう背景も存在しているからだ。
それに、対日貿易も大きいので、豪州にとってはTPPよりもはるかにメリットが見込まれるのである。農産物の輸出先として、中国市場は「消費人口の多さ」から見ても、有力である。

これはNZにとっても同じ。酪農製品の輸出先では中国はメリットが大きいと見込まれる。


総合的に見て、中国が受け入れ可能な水準というのは、ASEANでほぼカバーされているのであり、日本やその他が加入して、若干の修正とか、各国状況に応じて範囲の拡大ができる部分については、協議次第で対応可能、ということである。

TPPからFTAAPの道のりを考えるよりも、受け入れの容易さと実現可能性は、「ASEAN+3、+6」ということなのである。
その成長性と人口規模、GDP規模で考えても、TPPより有利である。


TPP推進派に告ぐ。

具体的に説明せよ。どうしてTPPなのか?

前原さんよ、消費者余剰という理由を挙げているのなら、「ASEAN+6」を否定できない、ということだ。それくらいは、判るよな?(笑)

愚かな短絡的判断は、日本の利益を損なう。