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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

福島第一原発1号機のIC(非常用復水器)運転について

昨日、取り上げると言っておきながら、書けませんでした。寄り道が多くなり過ぎた為です…。


国会事故調の報告書の本編の方ではなく、参考資料のp83(2.2.4-1)にある『オイスタークリーク発電所のIC系』という解説について書いてみたいと思います。


これまで拙ブログ記事では、「ICを止めない」と書いてきた(参考:http://d.hatena.ne.jp/trapds/20111026/1319637663)。当方がそう書いた理由は、東電の公表した事故対応マニュアルを読んだからだ。現実の原子炉運転については、全くのド素人ですので、それが正しい答えだと断言できるものではない。ただ、マニュアル中ではICを停止するという選択は、書かれていない、ということを主張するものである。


一方、参考資料中のオイスタークリーク発電所におけるIC系について、簡単に要約して言うと、


①ICは間歇的に運転と停止を行う
②2基同時運転だと1時間40分しか使えない(給水なし)
③崩壊熱の徐熱には、最大運転だと約34分しか持たない


といったことが述べられていた。


福島第1原発1号機のICの能力・条件とは異なる部分がある。
冷却能力であるが、オイスタークリーク発電所のものが1基当たり51.5Mkcal/h×2基となっているが、1号機のICは36.2Mkcal/hということのようである。これは、2基合計なのか、1基当たりなのかは定かではありません(まだ確認してません)。


また、マニュアル上の2次保有水(ICの冷却用の水)は、約6時間持続とされ、設置申請上では約8時間とされていたはずなので、②の100分とは大幅に異なる。水量はオイスタークリークが86㎥に対し、福島原発1号機では106㎥である。


現実の運転方法がどうなのかは知らないが、オイスタークリークのIC運転の説明の妥当性に若干の疑問点があるので、述べておきたい。



a)IC運転で過冷却はあるか


1号機ICは36.2Mkcal/hであるから、スクラム後の初期入力熱が約30Mkcalと仮定しても、温度低下は限られたものにしかならないであろうことが予想される。
更に、圧力容器自体の温度低下となれば、約500tの鉄塊の温度が50℃低下する必要があるわけである。その為には、ざっとの計算で約2.6Mkcalの除熱が必要となる。圧力容器内の水蒸気と水の量がよく分からないのだが、容積が約360㎥くらいだそうで、その中に100tの水が入っているとすれば(燃料棒を沈めるだけの水が必要のはずだからだ)、その温度が50℃低下するのに5Mkcalの除熱が必要となる。


すなわち、圧力容器自体と内部の水の温度が50℃低下する為には、約7.6Mkcalの冷却能力が必要ということである。これにプラスして、初期発生熱の入力があるわけであり、IC運転を約10分行ったとしても、これら冷却が達成されるとは想定しにくいということである。
55℃/hという低下温度を死守する為に停止することが必要かどうかは、やや疑問ではある。



b)ICのネガティブ・フィードバック機能


もしも人為的な操作を一切行わず、弁調節なども行わないとしても、ICには自律的なネガティブ・フィードバックが作動するであろう、と予想する。
第一に、冷却能が最大で発揮された場合、圧力容器内の蒸気圧は急激に減少してゆくことになるだろう。この時点で、2つのフィードバックが考えられるのではないか。それは圧力低下によるICへの導管を通過する蒸気の絶対量が減少してゆくはずだろう、ということと、IC内で冷却されるはずの蒸気温度の落差は最大冷却能を持っていた最初期段階よりも大幅に小さくなるはずだろう、という2点である。


従って、IC運転を継続すると、急速に冷却能力は落ちてゆくであろう、ということが予想される。



c)IC運転は、どう考えるべきか


ICの機構について、正確に知っているわけではない。が、基本的な考え方は、ある程度可能ではないかと思う。


まず、過冷却を防ぐという点からすると、当然ながら温度センサーの情報などを重視することになるだろう。圧力容器内の蒸気圧低下は、必ずしも急激な温度低下を意味しないからである。圧力容器内の温度センサーはいくつもついているはずで、それら情報を総合して考えるべき。内部の水の温度も、圧力容器温度も恐らく出るはずだろうから、そこからIC運転の加減を考えることは可能である。


電源喪失でセンサー類がダウンしたとしても、ICのネガティブ・フィードバック機能は生き続けるはずなので、それに賭けるべきとは思う。ICの冷却水プール106㎥の水が完全に蒸発してゼロになるまで、約65Mkcalの除熱が可能のはずで、その能力を使うことを優先するからだ。


IC運転は間歇的に行う、と参考資料では述べられているが、それ以外の調節方法も考慮できるのではないか、というのが、当方の意見である。
どうしてかといえば、ON-OFFを繰り返すだけで、電力損耗が多くなる。調節の感覚も掴み難くなることが多いのではないかと思う。2基同時使用だと過冷却になる、という意見に対しても、1基のみの使用より2基の方を推奨すべきと考える。


当然ながら、冷却能力は2基の方が優れている。プール水が温度上昇したとしても、放熱により若干は冷えることが期待できるはずだ。表面積を多くできるからである。なので、例えば1基で10の冷却能力があるとして、今、5だけ冷却能力があればいいとしても、1基だけ用いて5で冷やすのではなく、2基用いて2.5ずつ分担した方が望ましいはず、ということである。こちらの方が冷却能力としても効果が高いはずだ。


冷却方法として、蒸気圧が低下した方が望ましいはず。SRVが作動する場合であっても、SRVが頻繁に使われると圧力容器内の水の絶対量は確実に減少するからだ。ICの作動圧の設定がSRVよりも低いというのは、そういう点でも頷ける。ICを優先させることが大事で、できるならSRVはいよいよの時、と考えた方がよいはずだ。


ICの能力調節方法として、弁の開閉と、1基作動か2基作動しか選べない、ということならば、かなり大雑把な調節しかできないが、もし弁の開口度を調節できるのであれば、弁口の大きさで流量を調節した方が望ましい。蒸気圧が一定の場合でも、管径の3乗に反比例して流体の抵抗が生じるはずなので、弁の断面積を小さくすることでICの導管内を通過する蒸気量はかなり減らせるはずだからである。
この場合、やはりICの運転をOFFにはせず、弁口の開口度を調節することによって、2基とも動作させた方が望ましい、ということになる。使用電力量も減らせるはずだろう、2次プール水の残量維持の点でも望ましいはずだ、ということである。


もしも、ICが止まらず、水位高の状態でも止めずに放置していたとしても、圧力容器が過冷却となって破損するとは考え難く、燃料棒露出やメルトダウンに至るまでの時間は稼げたはずではないか、と。ただ、電源喪失時には弁が自動で閉になってしまうという設定になっていたので、ICが機能しなくなってしまうことは防げなかった。


ICが動いていると思い込んでいたとしても、2次冷却水プールへの補給をどうしてもっと早い時間帯で考えなかったのか、残念に思う(参考:http://d.hatena.ne.jp/trapds/20111227/1324990966)。A系とB系には、それぞれ65%と85%の残量があったわけで、爆発などで失われた量があったかもしれないが、仮に全部が冷却で失われた(量的には26.5㎥)として、約22.2Mkcalしか使っていなかった。初期入力熱を大きく下回る量だったのではないかな、ということである。


しかも、15条通報の第一報は2号機の冷却機能喪失、ということだったはずで、当初1号機が問題とはされていなかった。


ICの運転方法については、当方の個人的見解が主なものなので、ただの素人考えに過ぎないのかもしれない。



あと、本文の方の記述をまだ見てないので、そちらの確認を今後してみたいと思います。