怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

続・疑似科学ニュースのメカAG氏の論説に疑問

こちらの記事を取り上げて頂き、どうも有難うございます。
ただ、殆どご理解いただけてないようです。


http://nebula3.asks.jp/103374.html


まず、供給力というのは「実際に使っている電力」ではないはずです。ここまでだったら「供給する能力を有している」ということであって、実際に使われている電力しか発電はしません。
従って、火力の供給力が1400万kWある、という時でも、現実には1400万kWのフル出力では稼働していることはほぼ考えられません。7月や8月であっても、火力の稼働率が90%を超えている電力会社は、ほぼ皆無に等しいはずです。全原発が停止していた東電管内(2003年頃だったか)であってでも、90%など行かないでしょう。一般に水力は稼働率が高く、90%超はザラです。エコだから、当然です(揚水は含まない)。


揚水発電の供給力も、「300万kWある」という時には、現実に300万kWの出力で発電しているかどうかは不明です。殆どの場合には、そうはなってないはずです。何故なら、無駄が多いから、ですね。


7月初めの頃の需給だけを言っているのではなく、最大に近かった7月27日前後のことも記事に書いていますので、過去記事を辿ってみて下さい。
日々の供給力を観察してないと分からないことや、過去のデータを実際に見ないと分からないことが多いかと思いますが、メカAG氏はそれらが理解されていないのではないかと思われます。いちいち日々のデータの正確な根拠や、過去の統計データの在りかを示すことはできませんが(実際更新されてるものもある)、ご自身でよく検討して見て下さい(電事連のHPなどでもある程度調べられます)。


若干数字は異なりますが、大雑把な例として書いてみます。


合計の供給力(発電能力)が2750万kWであり、状態は①〜④があります。需要量は同じ2585万kW(予備率6%)で、一定とします。


      ①   ②   ③    ④
原子力   0   100   100    100
火力   1500  1400   1500   1350
水力   250   250   250    250
揚水   400   400   300    450
他    600   600   600    600


まず、メカAG氏の説に従えば、合計供給力が同じである時、揚水発電に回せる電力量が同じ、ということであるはずです。また、揚水発電のポンプ能力に規定されるのであり、供給電力が火力であろうと原子力であろうと変化はないはずです。


よって、①と②では同じ揚水発電の能力ということです。
しかし、揚水発電はエネルギーロスが大きいわけですから、火力で揚水発電に電力を回して、約3分の2以下(おおよそ60%程度と言われているらしい)の電力量にわざわざ落とす意味がありません。無駄が多くなるだけですから。


状態①から、原発を稼働させたとしても、元々火力の供給力が1500あるわけですからこれを使い、揚水発電分はできるだけ使わない方が圧倒的に得である、ということです。よって、夜間も火力をフル稼働させてまで揚水を使う理由はなく、単に日中に火力を多く使えば済む話です。揚水を減らす方がお得です。


従って、②を選ぶ理由はなく、③であるはずだ、ということです。実際はそうなってませんが(毎日データを見てないと分からないかもしれませんが)。メカAG氏は、③ではなく②であることを正当化できる理由を示すことができなければなりません。


更に、関電が原発を稼働させた後に起こった現象は、現実には④であった、ということを言っているわけです。メカAG氏の説では、原子力でも火力でも、合計供給力が同じであれば、揚水発電に変化はないでしょう。しかし、現実に行われたのは、原子力の供給量増加分以上に、火力供給力が削減され揚水発電が増加した、という事実です。


①から④に変化した合理的理由を示せなければなりませんが、メカAG氏の説をもってしても、これを説明できません。


ここで改めて書いておきますが、供給力というのは現実に使っている量ではありません。供給可能な量の上限、というだけです。
メカAG氏の説が正しいならば、原子力が増加したとしても、火力は減らさず、揚水供給力にできるだけ頼らない方がいいに決まっています。現実は、そうはなっていなかった、ということを指摘しているのです。また火力1350万kWの設備容量フル稼働よりも、1500万kW設備容量で90%稼働の方が望ましい(出力は同じ1350万)はずですよ。それをわざわざ落とすとなれば、メカAG氏の考えているようなものではないはずだということです。



6月需給に関しても、政府が検討していたのは昨年末からであり、1月時点で既に関電管内や北海道管内での電力不足水準は出されていました。1月や2月時点で6月の不足分を予測できないはずがないでしょう?


http://d.hatena.ne.jp/trapds/20120130/1327925440


それに、電力事業者は年度末までに供給計画を提出しなければならない、という法的義務があるわけですよ。つまり3月末時点まで、毎年毎年年度内の供給計画は出来てきたわけです。これが今年に限っては、特殊な数字しか並べられないということがあると思いますか?原発分は仕方がないとしても、他の数字は「例年と大きく違う」ということが想定できると思いますか?それを隠すのは、意図的うそを言う場合だけです。


6月に節電要請はありませんでした。
大飯再稼働問題も、6月の需給は問題とされず、7月8月だけでした。
6月時点で、停電する、などと、関電も政府もエネ庁も誰も言っていなかった、と指摘しているのですよ。関電の出した2542万kWをはるかに超える「最大電力量」の平均値である6月の需給は、安定しているという認識である、ということです。実際、そうでしたしね。



電力会社が隠している、嘘を言っている、というのは、何も大した根拠がないわけではないんですよ。データを調べて、例年の数字を拾ってみてゆけばゆくほど、ああ隠しているな、ということが分かるということです。その調べた過程全部を提示できないのは残念ですが、過去10年分くらいの数値を出来る限り当たって検討した結果である、ということは申し上げておきたいと思います。
今年の需給にしても、かなりの日数を観察してきた結果である、ということです。



それから、他社の需給が決まらないと電力融通も分からない、という説ですが。


夜間電力が逼迫して、関電の揚水分に回せる電力が200から100にダウンしてしまったとしますか。別な近隣電力会社Xには、揚水発電設備がほぼゼロ水準である時、夜間の余剰分は存在しないと思いますか?昼間500、夜350だとすると、その差はどこに消えてしまうと思いますか?
会社Xは揚水発電がないわけですから、使わない、ですよ。つまり、その差は必ず「余る電力供給量である」ということです。これが融通出来ない理由とは何だと思いますか?



揚水発電の(殆ど)ない会社が存在するということは、夜間電力量の余剰は必ず存在する、ということを意味する、と言っているのですよ。このような会社は存在しない、ということなら話は別ですが。これは夜間需給の計画とか、細かい話は若干ありますが、事実として「昼間より夜間は電力需要量が少ない」「昼間電力供給力が確保できている」ということがあれば、昼夜の差が必ず存在する、ということですので。量の問題はあるかもしれませんが、その差を例えば6割とかの水準で見込むことは、事前に可能であるはずだ、と言っているのですよ。仮に150万kWの差があれば、90万kW分は夜間電力として織り込めるのではないですか、ということです。


これは関電管内の節電効果や需給ギャップには「影響されない量」である、ということです。


メカAG氏の議論は、表層的であろうというのが、当方の感想です。