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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

アルジェリア天然ガスプラントにおける邦人殺害事件について

痛ましい報道があった。人質となっていた日揮従業員の殺害というものだった。非常に残念な結果だ。
悲劇ではあるけれども、日揮という会社には今後も頑張って欲しいし、海外展開を怯むのは避けてもらいたいとは思う。亡くなられた方々の御霊に報いる為にも、海外プラントを守り続けて欲しいと思う。


今回の事件では、犯行グループは早期に特定されており、当初からの犯行声明もあったわけである。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130116/k10014848411000.html

北アフリカアルジェリアで、天然ガス関連の施設がイスラム武装勢力に襲撃され、複数の日本人を含む外国人が拘束されたという情報についての犯行声明とみられる文書が、日本時間の16日夜、「イスラム教・マグレブ諸国のアルカイダ」が頻繁に犯行声明を出すことで知られるモーリタニアの「ヌアクショット通信社」のウェブサイトに掲載されました。

この中で実行部隊の司令官を名乗るハールド・アブル・アッバースという男が、「アルジェリアイナメナスにある石油施設で合わせて5人の外国人を拘束し人質に取った」と、犯行を認める声明を出しました。
声明では、人質はイギリス人1人、アメリカ人1人、ノルウェー人3人としており、日本人は含まれていません。

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で、事後的な声明は、以下のようなことだったらしい。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130121/k10014932111000.html

アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による人質事件で、武装勢力のリーダーによる新たな声明がモーリタニアのメディアのウェブサイトに掲載され、今回の事件について「われわれアルカイダが計画したものだ」として、国際テロ組織、アルカイダのメンバーであることを明らかにしました。

声明を出したのは武装勢力のリーダーで、ハーリド・アブ・アッバスという名前で活動しているモフタール・ベルモフタール幹部です。
モーリタニアの「サハラ・メディア」のウェブサイトに20日掲載された声明で、ベルモフタール幹部は、隣国マリへのフランスの軍事介入を停止させることが目的だったと改めて主張しています。
ベルモフタール幹部は、北アフリカを拠点とするイスラム過激派組織「イスラム教・マグレブ諸国のアルカイダ」を先月離反したとしていましたが、声明の中で「今回の作戦はわれわれアルカイダが計画したものだ」として、国際テロ組織アルカイダのメンバーであることを明らかにしています。
この声明は、事件が起きた翌日の今月17日に出されたとされていますが、ベルモフタール幹部の居場所などは明らかにされていません。

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犯行グループの声明から分かることは、

・目的は「マリへの仏軍介入を停止させること」
・AQIMを離脱したが、やったのは結局「アルカイダ

ということである。


もしも自分が犯行グループ人間か、仏政府関係者であるとすれば、どうも不可解だなとしか思えない事件である。以下に疑問点を書いてみる。


どうして人質を取ったかというと、政治的大義名分を掲げていても、本心としては「金」ということもよくある話ではある。そういう身代金交渉を考えていたなら、意味はあるかもしれない。ただ、人質を取る為だとすれば、別に、このプラントで拘束しなくてもいいわけで、「ここ」である必然性というものはない。


天然ガスプラントで騒ぎを起こせば、国際的な注目度が上がり、交渉に有利に働くかもしれない、という思惑でもあったのだろうか。だとすると、人質に爆弾を巻き付けていたこと、政府軍から攻撃された時、プラント爆破をしなかったことが、ちょっと疑問ではある。天然ガスプラントは重要な施設だから、アルジェリア政府軍がいかに強行手段に出てこようとも、プラント破壊はかなりの痛手だから攻撃を躊躇するかもしれない、ということである。


犯行グループはかなり入念に準備し計画していたことが窺われたわけで、施設内セキュリティなどについての熟知していたかのようだと言われていた。そこまで準備するなら、当初の目的からして、「人質」か「プラント」かの目標は持っていても不思議ではないだろう。
つまり、人質重視ならば拘束する場所が他でいいはずだ、ということ。アルジェリア政府にとっての重要施設であるところの「天然ガスプラント」占拠を重視するなら、攻撃を受けた際に爆破するのは「プラント」であるべきだ、ということ。人質を銃殺する意味合いというのは殆どない、ということである。


また、マリへの仏軍介入を拒否するのであれば、どうしてフランス人を大量に拘束したなかったのだろうか?或いは、交渉相手をアルジェリア政府にする必然性というものはないはずだろう。
日本人を人質に取るなら、日本政府を交渉相手に選び、フランス政府に「日本人が殺される恐れがあるので、仏軍はマリに攻撃しにゆくのを待ってほしい」と日本の総理大臣に言わせればいい、ということのはずだ。なのに、アルジェリア政府を交渉相手に選んで、アルジェリア政府に仏軍をマリから撤退させよ、と求めるのに人質を日本人するのは合理的ではない。仏政府にとっての日本人は自国民ではないから、だ。


身代金目的である場合でも、日本人対象で金を出させるなら日本政府を交渉相手に選ばなければ意味がない。仏軍撤退要求をするなら、仏政府が困るような人質なり施設なりを選ばなければ効果が乏しいに決まっている。

アルジェリアにフランス人やフランス企業がないはずもなく、トタルその他の仏系企業は犯行場所以外にいくつも存在していた。今回のBP系プラントを選ぶ理由は乏しい。
アルジェリア政府を交渉相手に選ぶなら、やはり強行突入してきた際に攻撃対象を人質とする意味はなく、プラントを攻撃するのが当然だろう。アルジェリア政府軍にとって、他国の人質が殺されたくらいでは、さほど痛くも感じないから、だ。人質に巻きつけるほどの爆弾を持っていたのに、施設には全く仕掛けなかったと?ハリウッドの暴力映画を見たことないのかな(笑)。


更に、犯行グループはここを占拠できたとして、出て行く時のことは考えていなかったのだろうか?
決定的なことは、周囲に遮蔽物が一切ない、ということだ。隠れて脱出はできない、ということ。包囲されてしまえば、完全な袋のネズミとなってしまうということである。

そういう場所に閉じこもることを選ぶのは、生還を考えない場合くらいではないか。死を覚悟して施設占拠を実行するなら、やはり最終決戦の際には施設爆破を考えるだろう。大打撃になるから、だ。


竹島に閉じこもるとか、砂漠のド真ん中に立て籠るとか、無謀なプランを考えるのは死んでもいい人だけである。単に、「マリからの仏軍撤退要求をする為に人質を取る」、ということを達成するだけなら、最初の方に書いた通り、もっと別な場所で拘束すればいいだけなのだから。その方が、犯人グループは生還できる可能性が高く、逃走経路も確保できやすいだろう。


実際、アルジェやアルズーといった地中海沿岸の都市部には、トタル等仏系企業の精製所施設や天然ガス輸出用施設などが存在していた。似たようなプラントを狙うなら、こうした仏系企業を狙うのが効果的だし、逃走も図り易い。
なのに、砂漠の真っただ中にある、周囲には逃げも隠れもできない、砂の海に浮かぶ孤島みたいなプラントを選んだ、と。かなり頭が悪いか、別な理由があるということくらいしか、思いつかないわけだが。


もう一つ、宗教的背景という問題がある。
イスラム過激派ということで、人質には「イスラム教徒か」という確認をしていたということがあったらしい。憎っき「キリスト教徒やユダヤ教徒」を選んで殺す、という意図なのだろうか。だとすると、日本人の人質を殺害してどうするのだろうか?
日本人というのが一般的にはキリスト教徒は少なく、宗教的寛容度も高いということは、イスラム社会でもある程度知られているはずだろう。インドであったテロ事件の場合だと、欧米人かユダヤ教徒を狙った、ということがあったわけだ。それとは違うと言われてしまうかもしれないが、日本人を目の敵にしても意味がないわけである。イスラムテログループにとっての日本人というのは、攻撃対象としては意味がない。身代金の金づるとして、というだけなら、価値が非常に高いだろうけど。


こうして考えると、今回の天然ガスプラントでの人質事件というのは、犯行グループの自滅的計画であるかのようなものだった、ということだ。しかも、一番の目的であるはずの、「マリへの仏軍介入停止(撤退)」要求を達成するには、効果がわざと乏しく最も遠い方法を選択したようにしか見えない、ということだ。


交渉相手に、仏政府を選ぶなら、フランス人を優先的に拉致、拘束するはずだし、攻撃施設も仏系企業を選ぶだろう。日本人を交渉材料として使う場合でも、日本政府から仏政府に向けて「撤退してくれ」と言わせることを考えるだろう。イラク邦人人質事件の場合でも、日本人を拘束し、アメリカ政府に向けて「撤退するように」要求させようとした、というわけだから。これが普通だ、ということ。犯行グループがよほどのバカでない限り、それくらい考えられるだろう、ということだ。

実行犯グループが事前準備はかなりやっていた様子から見て、そんなにバカではないはずだろう。むしろ周到に準備していたはず、だ。別な目的を持って、だけど。用意したのは、ただのテロではない、ということだ。


事件全体からすると、

①「天然ガスプラント」でなければならなかった
②「日系企業」及び「日本人」を標的としなければならなかった

ということだろう。
その為に、この地が選ばれた。仏軍撤退要求なんてものは、見せかけだ。



当方の推測では、こうだ。
恐らく、テログループ内に工作員が入っていた。その主導で上位組織から命じられたという形をとり、天然ガスプラント攻撃が決められた。上位の人間というのは、どうせ金でどうにでもなる「ミスター・マールボロ」みたいな極悪人だろう。

テログループは、アルジェリア政府軍から攻撃されることはない、と言い含められていたのではないか。そうして、この施設占拠の為に頭数を集めさせられた。一部はテログループではなく、潜入した工作員だったのだろう。訓練された人間が施設内侵入時のセキュリティ対策なんかを準備していたはず。
当初、犯行グループの中核メンバーは人質5名だけを予定しており、施設内人員の虐殺は考えていなかったはずだろう。だが、テロの犯行と称して潜入工作員が人質を殺して回ったのかも。最終的にはアルジェリア政府軍の強行突入があって、犯人グループは混乱に陥り、そうなると誰かれかまわず殺してしまった場合があったかもしれない。
だが、犯行グループに紛れ込んでいた潜入工作員が人質の大半を射殺し、犯行グループをも射殺できたであろう。日本人を射殺する為に存在していたのも、当然工作員だった。人質事件に便乗して実行したのだということ。外に逃げ出そうとした犯行グループは人質もろとも攻撃に遭い、殺害されただろう。


すなわち、テログループメンバーは施設内に集められて殺される運命にあって、アルジェリア政府軍と犯行グループは意図的に交戦させられ、人質もわざと殺された。施設から脱出を図った者は有無を言わさず殺された。偶然生き延びた人は、本当にたまたま運が良かっただけだった。
外に出たら直ぐに判る場所であった理由というのは、誰も逃がさない為だった、ということだ。襲われた天然ガスプラントは、そういう点で絶好の場所だったのだ。居住区にいて逃げのびた人たちもいたらしいが、日本人とは無関係だったからだろう。



アルジェリア政府軍に攻撃され射殺されたテログループ、という筋書きは、とてもよくできていたというわけだ。


攻撃対象が天然ガスプラントである理由は、いくつか考えられる。
日本が天然ガス依存に傾くことへの警鐘となろう。すなわち、原発復活の流れを作ろう、ということだ。核ビジネスの連中には大事な話だから。また、天然ガス価格への影響ということも大きい。価格低下を回避することができる。エネルギーメジャーへの利益供与(大手米系企業も大儲けだ)となろう。アルジェリア天然ガス輸出国の中では、ベスト4に入る国だ。そのプラントに不安となれば、価格上昇や需給懸念は出てこよう。石油も大事だという話もなるだろう。


日系企業を狙ったのは、天然ガスプラント技術では日本企業シェアが非常に大きいことと、海外での資源開発計画に掉さす為、といったことがある。日本人を殺害したのは、これまでの「日本人ジャーナリスト殺害」ではインパクトが弱い、ということで、もっと「切羽詰まった危機感」を抱かせる為だろう。
アメリカという軍事力大国が必要だ、テロとの戦いを継続する意志を持たせることが必要だ、日本は海外では無防備なんだと安全保障の必要性とありがたみを分からせることだ、海外で軍事力を使わせられるような法改正機運を生み出すことが必要だ、といったことがあるだろう。


それが証拠に、今回の一件で「自衛隊は海外に出せない、邦人救出もできない、自衛隊機も派遣できない」のはおかしい、という過去にも幾度となく出されてきた論点が早速報道されているだろう。そういう話の展開にせんが為に、道筋をつけるべく行われた犯罪が今回の人質虐殺事件だったというわけだ。


マリに介入している仏軍を排除したいなら、トタルの役員か幹部社員でも人質にして仏政府に交渉した方がマシだし、アルジェリアに溢れているルノー車でも狙い撃ちで自動車工場や販売店でも爆破するか、ルノー車だけ自動車爆弾で破壊するといったことの方が、仏政府にとっては打撃が大きいからな。キリスト教徒でも反イスラムでも何でもない日本人を殺すことの意味は全くないのだ。


今回犠牲になられた人質の方々は、政府の犯罪ともいうべき陰謀によって殺害されたと見るべきであり、それは許されざる国家犯罪だ。
断固戦うべきなのは、どこの誰かも不明の弱小テロなんかではなく、そういう犯罪を行う国家に対して、なのではないのか。「テロの攻撃」という虚像の為にこんな酷いことが行われたのだ、と考えるべきだ。


それと、事後に犯行声明を出したマールボロクソ野郎は、本当にやっていてもやっていなくても、当事者である実行犯グループが死んでしまっているなら「誰も否定できない」から、どんなことだって言えるんじゃないのかね。間違いを訂正できる人間が誰も生き残っていないんだもの。