怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

続々・誰が”円”を売ったのか?

水鏡仁さんから貴重なコメントを頂戴いたしました。
これについて、少し書いておきたいと思います。


まず、TOPIX東証一部全体の買い越し額の関係ついてですけれども、コメント欄にも書きましたが、一致するのが普通というのは、確かにその通りです。当方の思い違いがありました。買い越し額の多少というのが、市場全体の騰落を示すものではない、ということでした。
お詫び申し上げます。指数の算出に関して、あらぬ疑義を述べてしまったのは当方の誤りでした。


次に、為替取引についてですが、こちらはもう少し説明を追加したいと思います。
「円売り」するということは、相手方からするとそれは「円買い」だというのはおっしゃる通りです。そして、円資産がどこかに消えてなくなるわけではない、ということも、その通りです。問題は為替レートの変動がどうなって起こるか、という点です。


簡単な例で書いてみることにします。
(以下、円とドルの取引だけで書くことにします。レートもそうです)
今、取引する人として、甲さんと乙さん2人だけだとします。
甲さんは1万円札2枚を持っていて、ドルと交換します。乙さんは、これを250ドル出して交換しました。レートは1ドル80円です。乙さんの手元に2万円ありますが、この後、円安が進むという場合には、乙さんが持つ1万円札2枚を交換市場に提示すると甲さんが160ドルで買い戻す、というような取引を行う(レートは125円)ことになります。確かに1万円札2枚はどこにも消えてなくなることはありませんが、取引を繰り返す際に、乙さんは250ドル払って、160ドルで受け取ることになってしまうので、普通はこうした取引を短期間に行う人は殆どいないでしょう。


市場参加者が、各人2万円だけを持っているとして、この2万円を市場に提示し交換取引でドル代金を受け取ってしまうと(=円売り)、既に円資産は尽きているので、この人は市場参加者からは脱落してゆきます。2万円を新たに受け取った人は必ず現れますが、その際に支払ったドル代金よりも「必ず少ない」ドル代金で買い戻す(=円安になっている)という行動を行わない限り、市場に提示される円は登場しません。こうした損失を必ず受け入れる為に、円を買い、更に円売りを行う参加者というのは、極めて少ないはずだろう、ということです。


そうすると、1万円札2枚は消えてなくなるわけでなく、円資産自体は減っていませんが、2万円が250ドル→160ドル→100ドル、のように短期間で円安となってゆく為には、同じお札が2名の間で行ったり来たりしても意味はない、ということです。常に、市場に新たな1万円札を提示すること(追加される円資産)が必要になるはずだろう、ということです。しかも、最初に手放した人は脱落し、受け取った人も直ぐには売りに参加しないことが多いですから、別の1万円札2枚を持っている売り手が登場してくる必要があります。それとも、持っている1万円札が2枚ではなく、もっとたくさん持っている必要がある、ということです。


海外投資家が持つ1万円札は、為替市場取引額からするとあまり多いものではないはずであり、一度手放してしまったら脱落するタイプの人であろうな、ということです。根拠としては、日本国債保有高が70〜80兆円程度であるとしても、この大半を売らねばならないから、です。それとも、保有株式だともっと多額となるでしょうけれども、その換金売りが出ているとも思えないから(海外投資家は買い越しです)です。


2011年10月31日とその近辺で行われたであろう、円売り介入ですけれども、投入された金額は約9.1兆円であったことは財務省発表によって明らかとなっています。覆面介入も行われた、と言われておりましたが、前終値で75.79円だったレートが一時78円超まで2円以上下落したものの、11月9日には77.8円まで戻しています。投機筋などのパニック売りなんかで巻き戻しが加算されていて2円ちょっと円安になった、ということですから、大雑把に言って、「投入資金10兆円で2円」の円安達成、ということかな、と。
この資金量からすると、海外投資家が「新たな1万円札」を市場に供給し続ける為に、数十兆円分も売れたとは思えない、ということです。


再び、例で書いてみます。
取引する人は「Aさん」と「Bさん」です。Aさんは市場に100ドル紙幣を提示すると、Bさんは8000円で交換しました(レートは80円)。
次の期に、Aさんが100ドルを提示したら、Bさんは9000円で交換に応じました(レートは90円)。このように、Bさんは前の期よりも「多くの円」を追加した場合、レートは円安として観察されます。逆に円高になって、レートが80円から70円になれば、Bさんが交換に提供する円資金は前の期よりも1000円減ることになります。Aさんが「海外」、Bさんが「日本国内」と置き換えて区分するなら、いずれかにまとめられます。


すなわち、売られる円資金の量が市場に追加されてゆく場合、それは相手方に移るのは当然なのですが、受け取るドル金額が同じであるとレートは円安となります。売りに出される円の資金量が増加しているにも関わらず円高になるということは、円の増加率を上回る外貨の獲得量が必要となります。外貨建資産の増大率(前の期で受け取った量よりもずっと多い)がそれほど大きかった、ということは知りません。非金融法人保有の外貨建資産が大幅に増大した、ということなのかもしれませんが。


ああそうか、10年末の外貨準備高約1兆962億ドルから、11年末の約1兆3000億ドルまで2千億ドルくらいは増加しているので、ドルの受取が増えていたと見ることは不可能ではないのかもしれませんね。確かに、円の資金流出量というだけではなく、受け取った外貨量にも関係するので、資金循環だけから円高円安を言うのは間違いかもしれません。


ただ、昨年末くらいからの円安局面では、売りモノとして出される円資金は必要であり、推定される資金量は巨額であるはず、ということです。その資金提供者は、通常の売り主体では考え難いのではないかな、ということです。