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自工会の不都合な真実

2月の貿易収支速報が公表された。
その中のある数値は、特に目を引いた。それは、自動車だ。


貿易収支の悪化は明らかなのであるが、輸出減の主な要因は「自動車」「半導体等電子部品」「金属加工機械」だったそうだ。端的に言えば、最も足を引っ張ったのは「自動車」である。


自動車輸出は、数量ベースで見ると1月時点でもマイナスだった。しかも北米以外は軒並み減少。アジアもEUも数量・金額ともに大幅ダウン。北米市場では、1月はかろうじて金額でプラスを確保(数量はやはり大きくダウン)するも、2月は数量の大幅減少効果を円安ではカバーできず、金額で大幅マイナスとなったわけである。


従って、アベノミクスとやらの円安だからとて、自動車輸出が増加に転じた、といった傾向は見られていない、ということである。少なくとも出荷台数ベースではかなりの減少となっている。円安によって、どうにかそのマイナスが緩和された、ということのようだ。
同じマイナスになるなら、円高でマイナス幅が大きくなるよりも、円安で緩和された方がマシじゃないか、という意見はあり得るが、その場合は円高で恩恵を受ける経済主体(一般的には大多数の国民)から円安効果でプラス恩恵を受ける企業への所得移転ということになってしまうだろう。具体的には、原油LNGなどの輸入価格上昇による不利益、といったことである。


しかも、円安になったからといって、電機、自動車、金属・機械などの主力で輸出が伸びていない(むしろ減ってる、笑)ので、円安で輸入コストが大幅増となってしまうことの不利益の方が、今のところは圧倒的に痛いということになるだろう。
EUの経済問題とか不調によって、日本からの輸出が減少しているんだ、という見方もあるだろうけれども、それなら円安になっても輸出が増加するということにはならない(=世界需要の減退によって日本製品の売れ行きが左右されるということになり、為替要因はあまり関係ない、という見方となる)。その場合、輸入コストだけが増加するだけなので、日本には打撃となるだけである。
自動車、電機、金属・機械のクリーンナップが円安になったからとて、本当に輸出増加を達成し稼げるようになるのか、というのは若干の疑問がある。需要が消失してしまえば、リーマンショック後のような状態に陥るだけなので、例えば中国経済が大幅減速などという傾向が顕著になれば、やっぱり「円安なのに稼げない」というところに落ち着くだけだろう。せいぜいコスト率の若干の改善に寄与するかもしれないが、大した効果は得られない可能性もある。


すなわち円安を意図的にもたらすことで、わざわざ交易条件悪化に拍車をかけているだけ、ということになる。実際、03年までの貿易収支の姿というのは、輸出量が今ほど多くはなかったにも関わらず、交易条件は現在ほど悪化していなかった。


輸出額で見ると、悲惨だった98年で約50.6兆円(ドル円は140円前後を付けていたこともあったはず)、03年でも54.6兆円と僅か4兆円しか増えていない。それでも96年〜03年に貿易収支が9兆円黒字を割ったのは96年と01年の2回しかなく、10兆円前後の黒字を生み出していたわけである。ところが、05年以降で見ると、貿易収支はそれほど落ちてなくとも交易条件悪化が進んできており、特に08年以降はかなり顕著となっているのである。


これは例えば、輸出企業がデフレ継続を後押しするかのように輸出物価の下落を招き、輸入商社などにおいては原油等の意図的な高い輸入価格としてきた、というようなことである。それら利益は、主にグローバル企業群へともたらされたであろう、ということが推測されるのである。


今後、輸出物価が改善せず交易条件悪化が続く、或いは円安の恩恵を受けた企業群が思ったほど稼げず、単に「商品力」で競争に負ける(日本製品への需要がない)といったことならば、円安自体が日本国民への大打撃となる、ということは肝に銘じるべきであろう。
そういう意味においても、アベノミクスは両刃の剣である。


参考:http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/fb53d51b4f521f72a5b422c7b34d6cfc