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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

殿様商売の新幹線は敗退を繰り返す

インドネシアにおける高速鉄道の受注は、以前から注目されていた。一旦は、日本と中国の競争を白紙に戻し、高速は必須でなく中速でもいいというような報道発表がなされた。

しかし、結局は中国の受注が報道されることになり、恐らく「高速は必要ない(=もうちょっと遅くても問題ない)」。とインドネシア政府が言った時点で、日本の新幹線方式が敗退することはほぼ確定的であったろう。


日本側の姿勢がどういうものであるか、というのは、交渉現場の人々だけじゃなく、他の一般人の反応を見ても手に取るように分かろうというものだ。


こんなの>http://b.hatena.ne.jp/entry/blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1855211.html


事業内容を比較したりできないような人々ですら、こんなに「上から目線」っぽい、ってこと。最初から、日本=素晴らしい、中国=ハイ御仕舞、みたいな先入観と図式を信奉しており、そういう思考パターンや態度が相手側にも伝わってしまうのではないかとさえ思える。日本が中国との受注競争に敗れたのには、負けるべくして負けた、まさしく不思議の負けはないということだ。


この結果が意味するところを、日本の政治家も鉄道事業者経産省やJICAあたりも、あまり考えていないのではないか。日本の鉄道事業は、今後旅客数が減少する一方の日本国内で寂れてゆくであろう、という危機が現実になるかもしれない、ということである。


これに似たビジネスがかつて存在していた。
それは、携帯電話事業である。


日本の通信技術は品質がいいだのと御託を並べていても、現実に供給されてること、時間や金額を少なくできること、そういうことの重要性が理解されていなかった。

中国の携帯電話なんて、と誰しも思っていたかもしれない2000年代初期に、日本は携帯事業でことごとく中国企業との競合で敗退したわけだ。アフリカ大陸を見るがいい。電線網がなく、有線回線も全く存在しない、アフリカにおいて、携帯電話は貴重なインフラとなった。その基地局建設を推進したのは、主に中国系企業だった。彼らは、日本以外の先進国企業との苛烈な競争に打ち克ち、受注を繰り返すことで成長してきたのだよ。実際、ほとんどの地域で携帯電話だけは繋がる。少々の問題があろうとも、だ。

そして、携帯通信網というインフラを足掛かりとして、中国企業のアフリカ進出は他分野でも進んでいったわけだ。携帯基地局の受注利益以上のものが、経済波及効果として得られたのではないかということである。勿論、外交面でも、だ。


今や、世界2位の通信設備供給を持つ華為技術(ファーウェイ)は、日本の携帯事業者よりもずっと先にいる。

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO85767830W5A410C1X11000/


10年前、中国企業を鼻で嗤っていた者たちは、大勢いたのではないか?
そして、同じことが今も起こっており、日本企業の敗退の原因を考えてはいないということ。


インドネシア以外でも、マレーシアやタイやベトナムなどでも同じことが起こるかもしれない、という危機感が全くなかったということだな。勝負はやる前から、見えていたということだ。がむしゃらに仕事を受注しにくる中国と、武士の商法みたいにプライドだけは高くて、真剣に競争に勝つ気が見えない日本では、負けて当然だということ。


以前に、米国向けに高速鉄道事業の素案を書いたことがある。金欠に陥ったリーマンショック後の話であり、公共投資が経済下支えの意味を持つので効果ありと考えたものだ。


http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/fe5fa48c8b215f730753a941ef1205d2

(再掲)

③米国に於ける高速鉄道建設事業

一番の肝になるのは、これだ。米国での雇用を作る、という目的がある。日本の新幹線を米国で運行してもらえるようにするのである。
スキームは以下の通り。

 ・米国に合弁の事業会社を設立
 ・米国側資本(企業やファンド)が95%、日本側はJRが5%(+銀行や商社等を入れてもいい)
 ・この事業会社に日本の持つ外貨準備のうち仮に百億ドルを貸出
 ・30年の長期ローン、利率は現在の米国30年債と同等金利(or上乗せ0.1〜0.5%)でよい
 ・返済は事業スタート後の運行収益から返済してもらう
 ・JRは技術やシステムの移植、訓練や教育で協力する
 ・建設事業や車両製造事業などは米国内企業で行う(どうしてもできないものだけ日本国内で担当するとか、指導人員派遣などで対応してもよい)

概要だけだが、こういう感じでどうかな、と。

まず公共事業として米国自身でやろうとすれば、これは予算がないと着手できないので難しい、ということがあるかもしれない。なので、初期費用を日本が拠出し将来収益で返済してもらえばいいだけだ。日本がドルをただ持っているだけでは米国債を買うくらいしかないので、積んでおいても意味がないのと同じ。それなら、いっそ米国労働者の雇用を増やす方がずっと有効だ。約七千億ドルの米国債を売却しなくても、数千億ドルは保有しているはずなので、費用捻出は難しくはないと思う。



当時、米国の財政赤字が深刻だったので、初期費用は日本側が拠出する、ということで考えたものである。運行収益から返済するというのも、ごく普通の発想であろう。今回中国が提案したのも、こういう初期費用ナシ、というものだったらしいので、日本に工夫が足りなかった、ということだ。



また、中国の高速鉄道脱線事故を起こしたことがある、というのを「新幹線絶賛派」の人たちが自慢げに語っているが、鉄道事故は中国だけが起こすわけでない。将来、事故が起こった時に後悔するがいい、みたいに言うのって、恥ずかしくないのか。


欧州でも鉄道事故は起こっているし、米国だってつい先日も事故った。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2015/05/post-3638_1.php


米国の鉄道より、中国の方がまだ安全だ、ということなら、それを選択する国があっても不思議じゃない。TGVだって無事故ではないし。



要するに、上から下まで、日本は最高、素晴らしいという先入観と奇妙な価値観に凝り固まった日本人が、殿様商売をやって、その愚かさに気づくこともできず、まんまと敗退を繰り返し、世界のビジネスで大きく後れをとり、中国企業からは大きく水をあけられているんだ、ということ。ハイテク製造業の惨敗さえ、無様な固定観念から目覚めさせることができなかったということを、今回の新幹線大絶賛の連中が示してくれたのだ。