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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

輸出企業が経済成長を牽引するという幻想

GDP速報の上方修正でいかにも上向いているかのような報道が並んでいるが、戦時中の大本営発表に似たものであり、同じような精神性が感じられる。都合の悪い情報は、国民には知らせない、という姿勢ということである。

経済統計すら、大本営発表式に陥っては、日本はこの状況を脱出できる道さえ閉ざされているものと言えよう。まともな運営はできないばかりか、個人の下らない手柄だのミスの取り繕いだのに囚われて、大事な目的を忘れ事態の悪化を招くだけとなろう。


一番重要なことは、現状を正しく認識し、それに対する適確な政策を選択し実行すること、それだけである。悪い状況を誤魔化すことではない。


http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/gaiyou/pdf/point20151208.pdf


四半期の速報値ばかりに目を奪われている人たちが多いと思うが、確報値についてもよく見るべきである。喩えて言えば、契約獲得が9月だとしても、9月に支払が即実行されているわけでもなく、生産等が9月に行われるとは限らないから、仕事が暇だということはあるわけである。10月以降にならないと、実際の仕事にも売上にも反映されないというものも多々ある、ということだ。


だから、速報値で少々の数字を工夫して、算入時期を前倒しで数値をかさ上げしても、次の期では算入できないから年間では数字は同じである。1つの契約、受注は、1回しか金額に反映されない、ということは同じなのである。


2014年度の確報値は、公的需要が-0.3と大幅にダウン。しかも、その内訳で公的固定資本形成は-2.6と+2.0からの大幅下方修正となっている。これは、公共事業の予算額について、支出をしてないか仕事をしてない段階で統計値にカウントしたりすると、プラスの数字を生み出すことができ、次の期にはそれが消えることになるから大幅にマイナスに戻るということになるわけである。


例えば、金額が1期目+5、2期目+3というのは、実際の執行状況が+1、次期が+7というのが実際であることもある、ということだ。+4の分だけ前の期で多くカウントしてしまえば、次の期はそれが剥落するということになる。合計が+8なのは同じということ。速報値の時、+5の数字を見せられて、実態は+1かもしれない、ということだ。


日本経済がマイナス成長に喘いでいるということは、正しく認識するべきであろう。
輸出が日本経済の牽引役になる、などというのは、時代遅れの幻想である。海外生産に移行しているから、輸出企業が日本経済に貢献できる部分は、かなり少ないと考えるべき。下請け仕事なんかも、特別に増えるわけでもない。


http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2015_4-9.pdf


上半期の比較をすれば、それがよくわかるはずである。
ドルベースの輸出額推移は、日本経済の苦戦の一因が見えるだろう。

(日銀の各年12月の報告省令レートで計算)

年度   上半期輸出額(億ドル)

2011   4260

2012   4071

2013   3603

2014   3323

2015   3147


あの東日本大震災のあった年よりも大幅に少ない。あの悲惨だった09年上半期の3030億ドルと大差ない水準でしかないのである。
円の金額ベースで見ても、あまり意味はない。数量指数は、89.3(世界)と大幅に減少しているのだ。つまり、数が売れてない、ということだ。10%ダウンって、それは大幅に減ったということでしかないわけだ。

勿論、海外生産割合が高いことが影響するだろう。
国内で作って輸出するのではなく、海外で作って海外で売る、そういう方向なのだから、円安効果は大企業の決算報告の円ベースの数値が為替要因で大きくなる、というだけに過ぎない。


そして、その大金を手に入れた大企業が何をしているかと言えば、株主配当を増やすというくらいで、日本経済への貢献度は小さい。特に大問題なのが、子会社の株式配当金なんかが益金不算入みたいな、大企業の持ち株会社優遇の不当な税制だ。法人税の計算に入らない、「利益」として丸儲けになる。それが株式配当金の形で出てゆく。受取手の多くは、従業員なんかではなく、主に海外投資家などだ。


だから、大企業に金を持たせる経済運営そのものが、大失敗につながっているのだということ。
輸出企業がみんな苦戦したからといって、これを毎回毎回優遇してきたんだ。彼らの存在が、日本経済をここまで苦しめることに繋がった、と言っても過言ではない。


為替の調節速度は早いが、賃金や物価の調整速度はそれよりもずっと遅い。
インフレ基調が継続するまで続ける必要があるとしても、今の輸出物価の調整速度では全然追い付かないだろう。国内の賃金が為替レートと同等程度に変動(ドルベースで同じ水準くらい)しない限り、国内物価は中々上昇しない。中国の人件費上昇率を見てないのか?

日本人は、あまりに大人しすぎるのかもしれないな。


それで、大本営発表を「そうですか」と受け入れるのもどうかと思うんだが