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沖縄県の辺野古埋立承認撤回について

遂に、沖縄県は承認の撤回をいたしました。
本当に、勇気あるご決断をなさいました。無法の日本国政府や合衆国政府の横暴に立ち向かうべく、本格的法廷闘争はここからということになると思います。

どうか頑張って下さい。
さて、承認撤回を受けて、国は法的措置をとる、執行停止申立てをする、という報道がありました。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20180831-OYT1T50117.html

政府は近く、撤回処分の執行停止を裁判所に申し立てる。併せて、撤回処分の取り消し訴訟を起こす予定』

このような認識なのが、国の連中ということである。
執行停止の申立ては、撤回以前から言われていたものであり、行政訴訟の場合だと一般的な手続ではある。本件について、これを検討する。


1)国(防衛省)は、過去に執行停止の申立てを取下げた

まず、国の言う、最も愚かしい反論は、「以前の執行停止申立ては国土交通省に対するもので、今回は裁判所への申立てなのだから、全然違う」というものだ。

それは国たる法務省国交省の愚かさを際立たせるのには役立つが、裁判所への執行停止申立てには、何らの意味も持たない。以下にその理由を述べるが、まずはこれまでの経緯を簡単に示そう。


参考>https://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/e4bcdcb3274486fbcf93097821843a54


関係部分は以下の通り。

H27(2015)年

10月13日  沖縄防衛局  国交大臣に「審査請求」申立て
      取消処分の「執行停止」の申し出

10月27日  国交大臣が「執行停止」決定
      代執行訴訟の提起につき閣議了解(全会一致)

10月28日  245条の八 第1項に基づく是正勧告

10月29日  埋立工事再開

11月9日   245条の八 第2項に基づく是正指示

11月17日  245条の八 第3項に基づく代執行訴訟提起


H28(2016)年

3月4日  上記 代執行訴訟の和解
     防衛局は審査請求・執行停止を取り下げ 


国(防衛省)は、和解により執行停止の申立てを自らの手で取り下げたのだから、執行停止を再度申し出るべき理由がない。
もしも、「執行停止」が正しかったなら、国は和解に応ずる必要性もなければ、思考停止決定を取り消す必然性もなかったものである。


重要なことは、国(防衛省、国交大臣)が、自分の手により

ア)防衛局は「執行停止の申し出」を取下げた
イ)国交大臣のした「執行停止決定」を大臣が自ら取り消した

ということである。

※※イ)の取消の根拠文書が発見できないのだが、たぶんあるだろう。執行停止を取り消さない限り、国交大臣は後刻の新たな(取り消すよう翁長知事に求めた)「是正の指示」を出すことはできない。知事権限を停止させた張本人が国交大臣なのだから、停止を解除しないと「取り消しの大臣指示」に意味がない。
防衛省が申立てを取り下げても、自動的に大臣決定は消滅することはできない。新たに取消文書を発出(決定の取消処分)しない限り、行政側決定は有効のまま残存する。(後でもう少し書く)


2)行政不服審査法上の執行停止

一般的には、地裁に取消訴訟の提起か、審査庁への審査請求に伴い、執行停止申立て(審査請求の場合には「申し出」と呼ぶ)が行われる。つまり、前回の代執行訴訟時だと、地裁への申立てと同義の審査請求が国交省に行われた。

執行停止決定は、地裁への提訴なら裁判所が、審査請求なら裁決を出す審査庁が決定権限を持つ。埋立承認については、国交大臣にその権限があったので、執行停止が決定された。
行政事件訴訟法の場合とは、違いが少々ある(後述)。


根拠条文は次の通り。

行政不服審査法 第25条 

審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

2 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。

3 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない。

4 前二項の規定による審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。

5 審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。

6 第二項から第四項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない。

7 執行停止の申立てがあったとき、又は審理員から第四十条に規定する執行停止をすべき旨の意見書が提出されたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。

前回、国交大臣が執行停止決定をしたのは、25条2項によるもので、要件は4項の『重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき』を満たすことが必要なのである。過去にも何度が同じ説明を繰り返してきたが、執行停止をする為には、最低限必要な要件というのが、端的に言えば、

・重大性:重大な損害を避ける
・緊急性:緊急の必要がある

を同時に満たすことが必要なのである。

ウ)執行停止の要件は「重大性と緊急性を同時に満たす」


この執行停止の2条件を満たしても、公共の福祉に重大な害を及ぼす場合や、裁決結果が棄却だという場合には執行停止をしなくてもよい。


当初、執行停止を主張した防衛省の見解を認めたのが石井国交大臣であり、(翁長知事のした)処分による損害が重大性と緊急性を満たすのだ、と言ったわけだ。

しかし、翌年3月4日の和解時点では、防衛省がこれを取下げ、国交大臣もこれを取り消した、ということなのだから、25条4項の要件を満たしてはいなかった、と国が認めたということである。

処分による損害が重大で緊急性があるのが本当ならば、執行停止は取り消すことができないものだから、である。


2項の条件から、防衛省が申立てを取り下げたとしても、上級庁は「職権で」執行停止を決定できるのであるから、執行停止を取り消すことなく、速やかに裁決を出せば済むことだから、である(裁判所は職権では決定できない。申立てが必須)。
新たな是正指示なんぞに頼ることなく、上級庁(国交大臣)の裁決は処分庁への法的拘束力を有するので、それで良かった話なのである。
前記、ア)、イ)は必然の選択というものではなかった。

しかし、国交大臣は職権で執行停止決定を維持できるにも関わらず、それを敢えて取り消したということは、執行停止の要件を満たしていなかった、と大臣自らが認めたということであり、決定自体に違法がないと「自庁取消は不可能」との最高裁判決の拘束力も当然に及ぶのだから、国交大臣のした執行停止決定は違法が確定したも同然なのである。

エ)処分で生ずる損害が重大で緊急性があるなら、執行停止決定を取り消すことができない


いや、実は執行停止決定時と、和解時では事情が変更されたからだ、という主張をするかもしれない。確かに言ってきそうではある。

行政不服審査法 第26条 

執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。


事情変更で取り消したとしよう。例えば、申立て人の防衛局が自ら審査請求を取り下げたからだ、と。執行停止決定は適正、合法に行われたが、その後に状況が変わって事情変更を事由とする取消なんだ、と。
すると、審査請求と執行停止の申立て人が自分で取下げれば、申立て人の利益を保護する意味がなくなるので執行停止決定を取り消せたのだ、と(取消訴訟の取下げにより裁判所のした執行停止の意義が消滅する、というのも同じ)。


まあいいでしょう。
もしそう主張するとしても、申立て人とは防衛省、すなわち「国」なんですよ。国が「執行停止申し出を取下げ」、国交大臣は「申立て人たる「国」の保護利益がない」と認めて執行停止を取り消せた、ということになりるわけだ。


では、国の利益って、何だったのか?
それは翁長沖縄県知事が取消処分をした「埋立承認」、これにより埋立工事をやって基地建設をするというのが、国が散々主張してきた利益だったわけ。日米外交関係云々とかそういうのも、重大な損害だと言い張り続けてきたわけだよ。

それを「保護する意味がなくなったので、取り消します」と防衛省国交省が宣言したということだな。


行政が出した処分は、たとえ申請者が取り下げたとて、自動的に効力が消滅するわけではない。例えば、電波行政で周波数帯の割当があるとして、申請者甲に許認可庁が免許なり認可を与えると、その帯域は甲に割当られたままとなる。事後的に甲が事業変更で申請取下げをしても、許認可庁が甲に出した免許・認可は、残存し続けることになる。その帯域を他の事業者が利用できなくなってしまうではないか。なので、申請者甲が取下げをしたら、許認可庁は一度した処分(免許か認可)の取消処分をしなければならないだろう。申請者甲の利益は申請取下げで消滅してるのは分かるが、許認可庁のした処分自体は自動消滅させることはできないという意味だ。

同様に、防衛省が審査請求や執行停止の申し出を取り下げたとしても、国交大臣がこれを取り消さない限り、執行停止決定は残存し続けるだろう、ということ。そして、執行停止決定という行為がなされた以上、国はその論拠を自らが廃止したものである、ということだ。
申立て人=国の保護するべき利益など、最初からなかったのだ、ということを示しているのである。もしそれが、本当に重大性と緊急性のある利益ならば、国(防衛省国交省)が自ら捨て去ることなど到底不可能だったから、だ。


3)取消訴訟上の執行停止

前記でほぼ尽きているようなものだが、一応、行政事件での条文を見てみることにする(こちらも同じ「25条」となっており、意図的に対比されてるのかな、と思いました)。
ア)〜エ)で執行停止を申し立てる根拠は、消滅している。


行政事件訴訟法 第25条

処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。

3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。

4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。

5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。

6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7 第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。


こちらも同じく25条2項の、処分により生ずる『重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき』というのが要件となっており、行政不服審査法上の執行停止と同等ということだ。
審査請求自体が、地裁への取消訴訟と似た位置付けなのであるから、当然といえば当然ではあるが、適用条件はほぼ同一と考えてよいだろう。こちらは裁判所の職権での執行停止決定は不可能である。3項も行政不服審査法と変わらない。


つまり、冒頭で述べたように、前回の執行停止決定は行政不服審査法上のもので、今回は裁判所の判断なのだから別物である、などという主張は、全く無意味ということがお分かりになろう。

執行停止が認められる要件は同等なのだから、行政不服審査法上の執行停止決定を自らの手で取り消した者=国には、行政事件訴訟法25条2項の執行停止申立ての資格も理由もない、ということである。


前回の執行停止で守られたものは、国の「埋立権」(埋立承認)であり、今回の取消訴訟上でも同じく、国の「埋立権」を裁判所が保護してくれ、ということで、中身が同じなのだ。


国はそうやって馬鹿の一つ覚えみたいなことばかりやってくるのである。
今回執行停止の申立てをするとすれば、かなりのバカか法律無知のド素人じゃないと不可能ではないか。


前回の代執行訴訟の時にも、国は自分の出した是正の指示を取り消した挙句に、和解後にも同じ主張内容・同じ理由による是正指示を出したのだが、これも通常の知的水準を持つ人間ならばいかに異常であるか簡単に分かるものを、福岡高裁那覇支部最高裁も問題なしと認めるような愚かな社会ということである。


そういうインチキを何度繰り返そうと、どうせ誰にも分からないのだと舐めてる国と司法なので、今回も調子に乗ってやってくるかもしれない。で、まんまと執行停止を認めてくれる裁判所が登場する、というわけね。


もう一つ、忘れていたので追加しておく。
取消訴訟においては、総理大臣の異議、という特別な条項がある。


行政事件訴訟法 第27条 

第二十五条第二項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。執行停止の決定があつた後においても、同様とする。

2 前項の異議には、理由を附さなければならない。

3 前項の異議の理由においては、内閣総理大臣は、処分の効力を存続し、処分を執行し、又は手続を続行しなければ、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すものとする。

4 第一項の異議があつたときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければならない

5 第一項後段の異議は、執行停止の決定をした裁判所に対して述べなければならない。ただし、その決定に対する抗告が抗告裁判所に係属しているときは、抗告裁判所に対して述べなければならない。

6 内閣総理大臣は、やむをえない場合でなければ、第一項の異議を述べてはならず、また、異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。


この条文は、裁判所が執行停止をするかどうか、或いは、執行停止を決定してしまった場合に、内閣総理大臣が「執行停止はするな」と特別の異議申立てをする機会を確保するもので、この条項が発動された場合には、裁判所は執行停止ができない。執行停止後であれば、裁判所にこれを取り消させる効力を有するのだ。


ただ、この条項発動は、相当のやむを得ない事情が存在する場合のみ、であり、執行停止をされてしまうと公共の福祉に甚大な被害が及ぶような場合にだけ許されるという、特殊なものだ。異議の申立て後は国会において、説明責任を果たす義務を生じる。総理の最終兵器、みたいな位置付けだな。


本件について見れば、この総理の異議の効力が「執行停止の阻止」にあるものであり、執行停止を促すことはできない、というのがミソである。つまり、沖縄県のした撤回について執行停止をして欲しいのがアベ官邸側なのだが、逆の立場の為、使うことができないのだ。

通常の取消訴訟は行政に対する国民側からの請求なので、行政側の代弁として総理の立場があるわけだが、今回の国が取消訴訟をしてくるのは国民側の立場=防衛局は一私人と同等、の奴ら自身が以前の裁判で主張していたのが幸いしてw、総理は執行停止の阻止側にしかなれない、というわけである。

ざまあ

常日頃、行政側が行政訴訟上では有利な立場にあることが大半だが、今度は不利な側にアベ官邸が立てばよいのだよ。
いかに裁判所が全面支援してくれる、ということがあるにせよ、何らの理由も示さずには、くぐり抜けられないのだからな。お粗末な文章作成、まあ、無能のバカが束になって無駄にやってみるとよいだろう。


せいぜい、頑張れや。