怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

米国は日本主導の「ASEAN+6」を怖れた

先日も取り上げたが、もうちょっと細かく書いておくことにする。
08年3月時点での、米国サイドの見解というものが分かる。

http://d.hatena.ne.jp/trapds/20111111/1320991492


http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/special/global/epa/17/epa-s.pdf

この議事録から、ACCJのレイク会長の発言から、拾ってみる。
(青字が引用部)


①日米EPAは最も優先順位が低い

これは私の個人的な意見とともに、色々なワシントンの関係者と話をした結果だが、日米のEPAというのは最も優先順位が低く、1番最後に近いものであるということが一般的な印象だと思う。私もそういうふうに理解している。
これも一般的な印象だが、2点目として、発効済み、発効待ちのEPAの内容については、WTOのルール、すなわちサービスの貿易に関する一般協定であるGATSの第5条にある相当な範囲の分野を対象とすること、また関税及び貿易に関する一般協定であるGATTの第24条にある実質上すべての貿易についてという表現が実質的に確保されているのか。どこでラインを引くかというのは、それぞれの交渉でとても大きな課題になる。100%にできるだけ近いことを求めて交渉するのか、90%以下でいいのか、80%でいいのか、色々なレベルでラインを引くことができる。一般的な印象として日本政府が交渉しているEPAというのは、強いこだわりは必ずしもないと思われている。

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米国政府は日本との貿易交渉に興味など持っていなかった、という感触であろう。当時、ジャパンナッシングだの、パッシングだのと言われていたのだから、それも当然と思える。米国にとって、日本のことなど「眼中にない」ということだった。だから、政策担当者たちにとっても、日本との交渉になんて労力を割く必然性など感じられなかった、ということだ。


②米韓FTAは韓国の構造改革実現のテコ

最大限、構造改革のテコとして戦略的に、そして積極的に活用するのであれば、極力WTO上100%に近いカバレッジ、範囲も色々な分野で交渉していくことが求められると思う。私が理解する限り、韓国政府は国内経済構造改革を実現する上でのテコのためにも米国と交渉したFTAを使ったという理解である。

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今の日本でも「ガイアツ」を利用して構造改革をしろというTPP推進派は存在するだろう。そういう主張を目にすることはあったからね。米韓FTAも、例に漏れず構造改革のテコとして使え、と。韓国の格差社会構造は更に促進されるかもしれない。


③「ASEAN+3、+6」を阻止し対抗する為に生み出されたTPP

ASEAN+3、+6という展開が、アジアだけの展開として行われている。そして、日本政府のリードの下にASEAN+6という発表も行われた。これを受けて、御存知のようにアメリカ政府や議会関係者の中でも、ある1つの衝撃を受けて、新たなアジア経済戦略の展開が行われつつあるが、これは後でお話する。ただアジア経済統合に向けたルールが、色々な意味で統一化されていく上での現実的、効果的な戦略というのは、日本独自の戦略を考える上でも、米国とともにやるのが効果的なのか、米国とは全く別に展開をするのかが最も効果的なのかどうかというのは、勿論考えられていると思うが、私はもっと米国とともに展開する戦略の方が効果的なのではないかと考えている。

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核心部分はこれだ。
「アジアだけの展開として行われている」
「日本政府リードの下、ASEAN+6という発表」
アメリカ政府、議会関係者の衝撃」
「新たなアジア経済戦略の展開」
米国サイドは、日本がアジア圏で経済戦略基盤を確立しようとしていたことに、衝撃を受けるとともに、これを阻止し、対抗軸を作り出そうとして、「新たなアジア経済戦略」を考えるに至った、ということが判るのである。

08年当時の自民党政権は、望ましい方向へと進んでいたはずである。ASEANとの貿易協定推進、これを軸に「ASEAN+6」まで拡げようとしていたことも、中国、インド、韓国などが入れるような基盤を目指していたことも、間違った方向などではなかった。これを継承して、鳩山政権下でも行われようとしていたのだが、米国さまの横槍によって、頓挫させられるに至った、ということだ。


米国への傾倒を決定付けたのは、菅総理だった。
小沢―鳩山路線を追い落として、己の権力を握らんが為に「従米派勢力」と関係を頼み、総理の座に就いたのだ。菅という男は、権力欲の為に悪魔と取引したに等しい。その取引結果が、TPP参加検討、という宣言だった。菅は、普天間問題の「日米合意堅持」と「TPP参加」の受け入れを、総理のイスを手中にする取引材料に使った、ということなのだ。

狡猾な米国の「離間の計」によって、「中国は危険」というプロパガンダが奏功し、日中韓の貿易協定交渉は止まってしまったのかもしれない。
(参考:http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/37bb35ff8922de184e06c2d053c20dcb

米国は、何としても、日中の間を引き剥がしたかった、ということであろう。それが米国の利益に他ならないから、である。日本は、利用されただけ。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/28e6c8eb4fd267438c481e0925bce438
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/3a3ac2d92f8a4efac02b6a506f3b59a2
http://blog.goo.ne.jp/critic11110/s/%A5%D5%A5%B8%A5%B3


そして、今も、同じく利用されようとしているのが、野田政権なのである。

中国の方から、「招待状を貰ってない」という痛烈な皮肉が出されたのは、過去のこうした「米国のやり方」というものを知っていたからだろう。
日本政府は、愚かにも「米国さまの言いなりになりたいです」と宣言したに等しい。今回の野田総理発言は、国際社会ではそう受け取られている、ということだ。

日本はASEAN+6の路線に、回帰すべきなのである。ルール作りと主導権は、日本にこそあったのだから。