怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

経済学界という病〜事例3 池尾慶大教授の場合

消費者金融の上限金利問題の時には規制賛成派だったので、一応の援軍と思ったが、それはそれ、これはこれということで(笑)。

学者先生というのは、偉いせいなのか知らないが、一般庶民の行動とかを知らんとみえる。普通の考え方がどうして理解されないのかが、本当に疑問。要するに、自分の行動がどのように「経済」に参加しているものなのかが、理解されていないのではないか。まさしく「机上の空論」を弄ぶだけ、みたいなものだ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZ7VQH1A74E901.html

池尾教授は「金融機関にとって、貸出金利を一段と下げるようなプレッシャーが加わると、スプレッドが一層つぶれるので、リスクをとって貸し出しを行うことができなくなる」という。「借り手にとって金利が下がるのはありがたいが、その結果、金融機関から受けられる金融仲介サービスは乏しくなる。特に中小企業の場合、少々金利が下がるよりマイナスの効果の方が大きいのではないか」と語る。

なんかこう、小難しく言えばいいとでも思っているのかもしれないが、基本的な部分が全く理解できていないとしか思えないわけだが。
池尾教授の言う「一段と下げるようなプレッシャー」というものが何なのかが全く不明だが、銀行家の立場になってみたことがない愚か者のようにしか見えない。いや、当方だって銀行や金貸しをやったことがあるわけではないんですがね。

はっきり言えば、何トンチキなこと言ってんの、と感じました。
安全資産の利回りとしての目安になるんじゃないですかね。
政策金利や指標金利が引き下げられる、というのは、どういうことかといえば、リスクのない運用であれば、この水準、ということだ。それは、銀行が預金者にお約束する金利=資金コストの基準となるよ、という話だろうに。

国債金利が1年1%であると、1年定期預金を「1%−銀行のコスト」という水準で設定できますね、ということなんじゃないの?銀行コストは、金融機関ごとで異なるので、コストが少ない金融機関は高い金利を提示できるので有利か、見掛け上他金融機関と同じ金利―例えば0.75%―を提示した場合でも、コストが0.25%よりも少ないと儲けが多くなるよ、という話である。
日銀による金利引き下げは、資金コストを下げる効果が大きいのだ。銀行は、リスクを取らない国債運用1%の金利収入か、リスクのある中小企業に3%の貸出金利でもっと儲けを取るか、選べる、ということだろうに。リスクスプレッドを便宜的に2%と見れば、基準となる国債指標金利が5%の場合でもリスクスプレッド2%上乗せで7%貸出金利なら、3%貸出の場合と同じ儲けとなる、という話だろうに。

つまり基準となる資金コストを概ね安全資産金利―例えば国債運用の金利だ―と見立てた場合には、基準となるのが1%か3%か5%という違いはあれど、上乗せ金利の儲け部分というのは、一緒だ、という話である。その上乗せ金利の大きさは、銀行毎に異なっているのは当然だ、ということだろうに。新銀行東京とか振興銀なんかが、リスクプレミアムを大きく取った貸出を行っていたのを知らんのか?

資金コストが2%で、ハイリスクグループの企業に10%で貸せば、儲けが8%分出るのは当たり前だ、っての。逆に貸出金利が同じ10%であっても、国債指標金利が5%なら、儲け部分が5%しかなくなるから、儲けが減るよね、というのは当たり前だろうに。日銀が5%→2%に引き下げてくれたら、金融機関は全く同じ貸出金利を適用していても儲かるよ、という話だ。こんな簡単なことがどうして判らんのか?
一方借り手側からすると、金利引き下げ効果で同じリスクプレミアム2%が乗せられていても、基準金利が1%なら3%で借りられるし、基準金利が5%なら8%の調達コストを払うことになるんだろうに。どっちが得なのかは、一目瞭然。

池尾論説には読むべき価値もないが、次を見てみよう。

池尾教授は日銀が長めの金利やリスク資産のリスクプレミアムを押し下げようとしていることにも批判的だ。「包括緩和は市場メカニズムをゆがめる政策だ。米連銀がリーマンショック後に信用緩和策を行った時は、市場が機能不全に陥っていたので介入する意味があった。今の日本の金融市場はそれなりに機能しているのに、市場の価格形成をゆがめるようなことをして、何か良いことがあるのか」と語る。
  池尾教授は「基本に戻って考えた時、リスクプレミアムが小さければ小さいほど良いことなのか」という。「たとえば5%のリスクプレミアムが金融資産に上乗せされている時、それを無理やり2%に下げれば、資金を調達する人にとって、他の条件が一切変わらず、金利だけ2%に下がればうれしいだろうが、リスクプレミアムだってある種の価格なので、価格が下がれば供給は減るだろう」と語る。


この人はリスクプレミアムとか言うのだが、それはどういうものなのか理解しているのかな?
自分が預金をする立場でどうすると思うかを考えれば、分かりそうなものなのに。
1%の1年定期と3%の1年定期なら、どちらを選ぶか?大抵は、後者だな。信用度の低い金融機関とかコストの非常に少ないネット銀行とか、そういう違いで定期の金利差は出ることがある。銀行倒産リスクなどで違いは出るかもしれないけれど、普通は金利が高くて有利な方を選ぶだろう、ということだ。

日銀が社債を購入すると、何がいいのか?
社債の需給は需要が増えるわけだから、価格上昇=金利低下となる。すると、企業は銀行の貸出金利より低く有利なら、社債を発行しようとするだろう。発行環境が容易になるよ、ということだ。すると、社債で大型設備投資の資金調達をしよう、という企業が出るかもしれない。それとも、貸出金利との競合になるから、貸出金利の引き下げ効果が出る。つまりは、借入参加者の参入障壁を引き下げる、ということだわな。
金利負担が、毎月50万円かかります、という時と、10万円で済みます、という時だと、経営面ではこの浮いた40万円分は他経費に回せる、他の経費が同じなら金利差分だけ儲けが大きくなるから赤字確率が減る、ということになるだろうが。大成功しないと金利負担に耐えられない事業ではなくとも、そこそこ儲けの出る事業でもやっていけるということなら、それが新規事業参入を促進するだろうに。


あと、ETFなどのリスク資産を買ってどうすんだ、と文句を言うが、金融機関の多くは株式を保有しているわけで、株価が下がっていく局面においては、その分だけ「貸出余力を奪う」ということになるだろうが。けれど、株価の下落を下支えすると、貸出余力は残されたままになるから、安全運用=国債投資なんかよりも、リスクをとった投資=例えば貸出に資金を向けることが可能になる。自己資本比率を維持しなければならないので、株価下落が続くと金融機関の預貸率は下がるとか社債投資などが減少する傾向になるだろう、と推測される。

なので、池尾教授は何の為に金利引き下げをやるのか、リスク資産買入をやるのか、ということの根本からして理解できてないんじゃないかと思う。それは、所詮「空理空論を弄ぶ学者」だからではないかとしか思えないわけだが。商売をやる側の人間の気持ちになって考えることができない、ということだ。銀行家になってもいいし、一般の事業家でもいいが、学問の上だけではない経済活動を想像してみるべきであろう。

金利(リスクプレミアム)が下がれば、参入が容易になる、という例は、いくつも見てきたではないか。ギリシャが低い金利国債発行できるようになったのは、まさにそうだ。それとも、アメリカで住宅投資が容易になったのも同じではないか。

経済学者といっても、何にも学べない、理解できていない人間がこれほど大勢いることに、心の底から驚く。しかも、一人や二人ではないんだな。偉そうな肩書きがくっついていたり、マスコミに登場してくる連中の多くが、こういう程度なんだなという印象である。