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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

政府予測は過大 1〜3月期における関電の電力需給を検証する

エネ庁や経産省官僚にとって、電力が問題なく供給されると非常に困る人たちが出てくるのでしょうか。
もしも供給が足りる、ということになってしまうと、原発を動かすという大義名分は完全に失われるからだ。なので、いっそ「大停電にでもなればいい」と思っている人がでかねない状況も考えられうるわけです。某議員もそのような発言をしていたようです(ネット記事で見かけた)。

ここで、政府の見解―実際には霞が関の資料作成や数字作りをやってる官僚の見解だろう―の検証を試みたいと思います。

当初、電力不足になると言っていたわけである。
http://www.meti.go.jp/setsuden/pdf/touki01.pdf

これによれば、約10%もの不足になる、ということだった(11月時点)。

◎関電管内
    需要    供給    不足
12月   2545    2563
1月   2665    2477  ▲7.1%
2月   2665    2412  ▲9.5%
3月   2459    2265  ▲7.9%
(単位:万kW)

ところが、現実にはどうであったか?

http://mainichi.jp/select/news/20120324k0000m020111000c.html
(以下に引用)

関西電力:冬の節電要請、問題なく終了
毎日新聞 2012年03月23日 22時48分
 関西電力は23日、昨年12月19日から実施してきた「昨冬比10%以上」の節電要請を大規模停電など電力不足になることなく終了した。原発が全停止したものの、需要に対する供給余力(予備率)が10%以下となったのは5日間で、5%未満はなかった。関電は期間中の節電効果は約5%(約120万キロワット)だったと発表した。4月の電力需給の見通しは3.4%の余力を既に確保したという。

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この記事から分かることは、
・条件1:期間12/19〜3/22
・条件2:85日/90日で予備率10%以上※
・条件3:予備率5%未満はゼロ
・条件4:節電効果は約120万kW(約5%相当)
である。
(※5/25訂正 予備率90%ではないです、需要が90%以下ですね、お詫びして訂正致します)


政府予測から見ても、関電の1〜3月期の供給力はざっと2400〜2500万kWであったと考える。条件4に適合し易いし、2400万kWというのが標準的な発電量水準であると思われる。

①供給量を2400万kWと仮定した場合
条件2から、85日間では、発電量の90%以下で済んだ、即ち2160万kW以下だった、ということが判る。政府需要量(2665万)との乖離は505万kWとなり、供給力2400万の21%もの極めて過大な需要を見込んでいたことになる。事前の不足予想が7〜10%だったのに、これをゼロに戻したばかりかプラス10%以上の余力が残されていた。
予備率5%が最小であったとして、2280万kWの需要だったことになる。

②供給量を2500万kWと仮定した場合
政府予測ではこの水準は不可能であるはずだが、まあ一応。
85日間で2250万kW以下だった(条件2)。95%で2375万kW。節電効果120万kWは4.8%相当ということになる。そんなに大幅に違いはない。
政府予測需要との乖離は415万kW(16.6%過大)。最大需要と看做した2375万とでも290万kWも違う。

ここまでで判ることは、節約分が120万kWあったとしても、政府予測通りならマイナスになるはずだった。供給不足の水準が7〜10%もあったのに、現実には殆ど(94.4%)が90%以下しか需要がなかった。予測は全然ハズレか、出鱈目、半分”脅し”も込み、ということですかな(笑)。

政府の見通しは、最大電力量だから、平均的な水準ではない、とか言い訳するかもしれない。確かに、そういう言い分があるかもしれない。

実際、最大電力量を見ると、次のようになっていた。
12月   2404
1月   2447
2月   2578

政府予測が全然違う、ということでもないかもしれない。が、供給力がこれでマックスだったかというと、やや疑問もある。揚水発電がかなり少ないから、だ。
他にも、不利な条件はいくつかあったのに、それでも需給は問題なく経過した、ということだ。その不利な要因を挙げていこう。


1)出水率が低かった

水力発電の発電量に大きく影響すると考えられるのが、この数値だ。非常に大雑把に説明すると、多ければ水が多く流れるから沢山発電でき、逆に少ないと発電量が減るよ、というものである。平年値との比較で算出されているものと思うが、正確には定義を知らないので詳しい人に聞いて。
で、出水率ですが、1月は86.7%、2月は98.8%で、2月はほぼ平年並みでしたが1月はかなり少なかった、ということです。
年平均だと、1995〜2010年のうち、90%以下になったのは、わずか2回(01年と05年)しかありません。結構、珍しいかもしれません(ただ毎月の数値だともっと変動幅が大きくなるかもしれず、一概には言えないのかもしれないが)。
要するに、水力発電は1月が特に条件が悪かった、ということです。それでも、需給は満たされていた、ということ。


2)揚水発電量は少なかった

最大の発電量が判らないのですが、日ごとのデータを出してもらわないとよく分からないのですね。けれども、月次の発電量(MWh)での比較は可能です。
22年度と23年度で比較してみました。
23年12月の発電量(MWh)を100とした場合の、各月の発電量の相対値は次のようになっていました。

   22年度  23年度
12月   471   100
1月   346   184
2月   194   341
合計  1011   625

需給が厳しいと言われていた今年の方が、揚水発電による発電量は少なかった、ということです。どうしてかといえば、夜間にエアコンガンガンだったから余剰電力が少なくて発電できなかった、とかではなく、単純に「足りてたから」だろうね。揚水発電を利用する必要性は乏しかった、ということ。


3)動いていたのは高浜3号のみ

高浜2号が11月下旬に、12月中旬には大飯2号と美浜2号(2つで132.6万kW)が停止した。2月20日まで稼働していたのが高浜3号(87万kW)だけだった。予備率からすると、この高浜3号の有無はあまり大勢に影響はなかったであろう。勿論安全率を考えれば、余裕は大きいにこしたことはない。
けれども、2400万kWの10%予備率240万kWが存在していた期間(94.4%)を考えると、87万kWがなかったとしても、絶対的な供給力不足を招いたとは思われない。


4)九電の新大分火力の緊急停止

火力の突発的な事故や停止があったらどうするんだ、という懸念は、こうした事実を見れば理解できるものです。実際、2月に発生したこの停止によって、九電管内は予備率が3%切るかどうかというギリギリの水準まで接近した、と報じらていたように記憶しています。
この時、関電、中国や四国電力などからの応援融通によって、九電の窮地を救うことになったわけです。240万kWもの融通を実行できた、ということでした。現場の方々は、それはもう冷や汗ものだったとは思いますよ。こうした事態を乗り切るのは、容易ではないはずですから。気持ちも判ります。
ただ、関電管内の需給だけを言うなら、この事態が発生したのに緊急で融通できた、というのが事実だ、ということです。政府予測で10%近いマイナス水準であったはずの関電が、九電に緊急で回せる供給余力はあった、ということを言っているのです。
恐らく、2月の最大発電量となった2578万kWというのは、この緊急融通後に発生したのではないかと推測しています。この応援の結果、予備率が5%近くまで低下した、ということだったろうということです。政府予測に最も近づいたのは、この時だったのではないかと。



こうした不利な状況下にあっても、政府の予測は見事に外れました。
節電意識を高めさせるには、厳しく脅かすことが効果があるかもしれず(大丈夫と言ってしまうと油断しやすくなるかもしれないから)、意図的に過大な数字を出しているということなのかもしれません。
が、普通は説明をする際の数字の前提だとか、実務上ではこのように乗り切るよ、というのを正確に説明するはずで、どの程度の安全率を見込むから、この程度のギャップが出るんだよ、といったことを言うのが当たり前でしょう。そうした説明をすることなく、足りないと脅かしてやれば、原発を動かすことに同意するだろう、という安易な目論見がありありと滲み出ているようにしか感じられないわけである。
万が一、足りません、停電でした、なんてことになったら大変だから、責任取れないから、余計に安全性重視で数字を出そうとする気持ちにもなるだろうから、まあ、全く判らないではありませんがね。

よって、今年の夏の需給にしても、足りるから大丈夫、といった甘さは捨てるべきで、厳しい決意のもとに、原発に引導を渡すべく、さらなる節電やピークカット対策を積み上げてゆくことは必須だ。
冬期間の需給に余裕があったのは、気候要因もあるのかもしれないが、全体的に節電意識が高まったお陰かもしれず、ここで気を緩めることなく、更なる省エネを推進することが大事だ。使わなければ、値上げ分を吸収できるようになるかもしれないし。値上げ問題については、いずれ書くかも。


結論としては、政府予測はほぼハズレ、というか、わざと過大に出されている、と見るべきであろう。
夏の需給についても、過大に出されているはずだ。

今夏の予測について、その真偽を確かめる術を一般国民は持っていない。データをわざと調べ難くしているし。一般人には、見せたくない情報というのがかなりある、ということでは。