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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

メキシコはNAFTAのお陰で経済成長したわけではない

世間には、自由貿易礼讃者が存在するのかもしれないが、無条件に自由貿易を称揚することは私にはできない。

TPPを肯定する為に、NAFTAを成功例として挙げている人を見かけたが、そこにも落とし穴があると考える。


メキシコにおいて、NAFTAが開始されて以降の過去20年間で、GDPは2倍近くになり、工業の労働者数が増加したことを成功と捉えている人がいる。
だが、それは本当に自由貿易のお陰であり、NAFTA締結がもたらした恩恵なのだろうか?


実際に数字で考えてみよう。
まず、メキシコの1993年時点での実質GDPを100とし、2013年の実質GDP(直近の推計値)を指数化してみる。
すると、167.83に増加していたことが判る。
(参考までに、同一期間で日本は100→119.2という、ごく少しの(笑)成長幅しかなかった。)


では、メキシコの成長をもたらしたものは、日本なんかには存在しなかった貿易協定であるところの「NAFTA」だったのだろうか?


拙ブログでの見解は、違う。
もっと別な要因ではないか、ということだ。


上記メキシコの数字を見たのと同じ要領で、他の国も見てみることにした。


インドの同じ期間での成長はどうだったか?
 100→370.3
ということで、3倍以上の成長を見せた。
インドは人口増加の恩恵があったからだ、とか、英語圏だから、みたいな言い分もあるかもしれない。じゃあ、他は?
人口規模の似た感じの国から、選んでみた。


  インドネシア  240.0
  ナイジェリア  338.4
  パキスタン   233.3
  アルゼンチン  203.5


テロの巣窟みたいに言われてたパキスタンでも、2倍以上だ。ナイジェリアは原油天然ガスの恩恵があるからだ、とか言うかもしれない。革命騒動だったか内戦テロがあったインドネシアでも、やはり2.4倍だ。

アルゼンチンは人口規模がずっと小さいが、中南米地域の参考として出した。どうしてかと言えば、デフォルト常習国であり、割と最近での今世紀以降でさえ経済危機とか混乱を生じていたからだ。そのアルゼンチンでさえ、同じく中南米地域という条件で、貿易や経済活動の閉鎖性が散々言われたりする国なのに、メキシコより「パフォーマンスが良かった」ということになるのではないか?、ということだ。


つまり、「メキシコが高成長」みたいに言うのは、どうなんだろうな、ということである。それは本当に、自由貿易のお陰なのか?
そんなものがない国においてでさえ、経済成長パフォーマンスはもっと良い、という結果になっているのではないか?


参考数値として、他も見てみよう。

  豪     196.0
  カナダ   168.1
  米国    162.6


人口規模は異なるが、割と先進国の仲間として扱われてきたであろう豪と加と比べても、メキシコの成長率が高かったとは言い難い。むしろ、北米地域の米加にトラップされており、同程度の成長パフォーマンスに落ち着いてしまった、という印象しかない。

インド、インドネシアパキスタン、アルゼンチン、ナイジェリアよりも、ずっと低い成長率しか残せなかった、ということの方が、はるかに気になるわけである。NAFTA圏の3カ国が、ほぼ平準化されたかのような成長率であるとするなら、まるで同一の国になってしまったかのような錯覚を与える。まさしく「アメリカ化」だ。


むしろアメリカ化した同一経済圏の成長率が同じようになったとしても、驚くには当たらないだろう。本来的には、もっと高い成長率が達成できたかもしれないメキシコは、残念ながらアメリカにその一部を吸い上げられてしまって、米加程度の成長率しか得られなかった、という意見を否定できるかどうか、悩ましいところである。