怒りのブログ別館

【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

信金口座開設拒否は「イスラム国」呼称問題が原因なのか

早速、鬼の首を獲ったかのような方々が大勢おられるようで、イスラム国って呼ぶからだ「ホラみたことか」組がごまんと出てますな。

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asahi.com/articles/ASH2V64S9H2VUTPB01Q.html


モトケン氏も『杞憂でなかったことを示す実例』と。
https://twitter.com/motoken_tw/status/571866894329749504


沼津信金の対応について、初歩的な差別だの偏見だのと詰る連中がこれほど多いとは、嘆かわしい限りですね。取材に応じたリスク統括の担当者を論難するほど、沼津信金の対応を非難している人たちは金融機関の業務について精通しているのだろうか。


当方は金融機関の就業経験はありませんし、詳しいわけでもないですが、「イスラム国」という呼称やマスコミでの表記が今回の結果をもたらした、とは考えていませんので、当方の考え方を書いてみたいと思います。

まずは、当方が本件信金の担当者になった立場と思って、述べてみます。


話題の記事はこちら。
http://www.asahi.com/articles/ASH2V64S9H2VUTPB01Q.html

静岡県御殿場市の男性が、自ら立ち上げた任意団体「日本イスラーム圏友好協会」名義で沼津信用金庫(本店・静岡県沼津市)に口座を開設しようとしたところ、団体名に「イスラム」が含まれることを理由に断られた。男性は「『イスラムは怖い』という偏見そのもの」と話している。

 男性は斉藤力二朗さん(66)。エジプトのカイロ大卒で、中東系銀行の日本勤務のほか、日本の大学でアラビア語講師などを務めた。その後、10年前からイスラム圏の政治情勢や事件などについて、自らのブログなどに書いてきた。

 過激派組織「イスラム国」(IS)が日本人を殺害したとみられる事件が起き、その影響で「イスラムは怖い」という偏見が日本に広がっていると感じた。「正しい情報を発信したい」と1月に協会を設立。メールマガジン発行や講演会開催といった活動を始めるにあたり、資金管理用の口座を作ろうと、2月24日に沼津信金上町支店(御殿場市)に電話で相談すると、職員から「イスラムという名前が入った団体では口座は開けない」と言われたという。

=======


この記事の文面だけだと、信金側の言い分が断片的にしか分からないですね。決定的と見られているのが、「イスラムという名前が入った団体では口座は開けない」という部分です。このことについて、あくまで当方の推測に基づいて、信金側言い分を説明していきたいと思います。


1)リスク担当は「イスラム」という語に対し差別や偏見で拒否したのか

報道などでよく「イスラム国」と目にするので、イスラムイスラム国と見做す、或は記事中にあるように「イスラムは怖い」などといった、極めて稚拙な短絡的思考により、拒否したと考えられるであろうか?
そのような低劣な思考パターンを持つのは、排外運動に精を出したりする連中以外にいるとは思われない。少なくとも信金の窓口担当者なりリスク統括担当者が、イスラムは怖いなどという低レベルの基準で否定したとは考えにくく、「イスラム国」と「イスラーム圏友好協会」との混同があったとは思えない。それら偏見に基づく判断が拒否の理由であるとは到底思えないのである。


2)拒否の理由とは何だったのか?

単純なマニュアル的判断ではないであろう。リスク担当者が言う通り総合的に判断したものと思う。内部的事情があっても、取材に対して正直に全部を話すとも思えないし。理由がいくつかあるので、分けて述べる。


①政府及び金融庁の厳しい指導

最大の理由がこれだろうと思う。実際、2月以降に指導が強化されたということですので。

2/3>http://www.jiji.com/jc/zc?k=201502/2015020300210

麻生太郎副総理兼財務・金融相は3日午前の閣議後記者会見で、過激組織「イスラム国」による日本人人質事件を受け、金融庁が疑わしい金融取引の届け出などを徹底するよう金融機関に指示したことを明らかにした。
 マネーロンダリング資金洗浄)対策を強化する改正犯罪収益移転防止法が、昨秋の臨時国会で成立した。麻生氏は、同法を踏まえ「テロ(組織)への資金供与を未然に防ぐことが大切だ」と強調。税関では、銃器や爆発物などテロリストの武器になる物品の国内流入を防ぐため、検査を強化することも表明した。

=========


金融庁が厳しくやれ、と言うのですから、そうするでしょう、という話である。しかも、これには伏線がある。例えば、暴力団等の反社会的勢力との取引があった、ということで、みずほ銀行が業務改善命令まで食らった事件が13年にあった。みずほ銀本体ではなく、自動車ローンを提携ローン会社が組んだという理由で、だ。重箱の隅をつつくような話でも、金融機関にとっては死活問題なのだ。

テロ資金の件でも、信金等は怪しいと思ったら届出義務があるので、いちいち届出しなければならないのだ。それが、今まで以上に「厳格化せよ」とお達しが来れば、そうせざるを得ないであろう。

まとめると、

※テロ資金に関する法規制強化+2月から更に強化指導+金融庁の厳罰姿勢


イスラム関係者への刑事捜査頻発

学生の渡航前の私戦予備陰謀適用(どうして旅券返納でなかったのかな?)、これに続きジャーナリストや研究者を容疑者として警察が捜査したわけである。別に、常岡氏や中田氏が犯罪者の片鱗が明瞭だったとは思わないが、普通に見える人でも犯罪者とかテロとかネット上では批判されていた(批判してた連中は誰だったか?)。
これらから推定されるのは、「イスラームに詳しい」とか「イスラーム関係者です」という情報が示しているのは「犯罪に関与しているかもしれない」ということであり、その予断を与えているのはこうした事件捜査である、ということだ。

イスラーム関係者への事件捜査が相次いだこと+テロ同然の扱いで批判があったこと


③万が一の時の事後的バッシングの予防

韓国や中国への非難を日常的に行っているような連中は、例えば「日本朝鮮友好協会」という団体があって、北朝鮮への送金が発覚したりしたら、「どこからどう見ても北朝鮮と関係してるって一目瞭然だろ」とか、「××××××だから名前で分からよ、テロ集団に決まってるだろ」とか言うのではないですか?

つまり、「どうして分からなかったのか」と難詰する連中というのは、事後的にいくらでもどうとでも言える、ということなのですよ。自分じゃないから、だ。
今はその団体が犯罪者ではないかもしれないが、口座を作って数年してから不正送金が発覚したり、金融庁検査の際に「どういう経緯で口座開設したのか」と徹底指導を食らったりするやもしれず、そうすると事後的に「どうしてこんなことしたんだ、分からなかったのか」と厳しく批判されるくらいなら、回避しておきたい、と考えても不思議ではないということ。


電話だったこと

これが不可解なのだが、どうして電話だったのだろう?相談だけだから?行くのが面倒だったから?
常識的な判断として、本当に自分の言い分を認めてもらいたいと思うなら、支店なりに行くのが普通なのではないかと思うのだが。どこの銀行でもいいので、試しに電話で「ああ、お金借りたいんだけど」と相談してみるとよい。
そもそも断られることを事前に期待していたかのようである。その上、こんな些末な話題を一個人が朝日にどうやって報道させるまでに至ったのかが気になる。朝日新聞記者はどこの情報提供だったのだろう?

それ以上に問題なのは、不正取引に多いのが「非対面」形式というものなのだ。つまり、取引形式としてネットや電話など、顔を突き合わせない場合に問題が発生しやすい、ということである。なので、金融庁は非対面の取引を厳しく指導しているはずだ。
一般論として、電話だけで「○○町内会サッカー倶楽部」といった団体の口座開設はできますか、と尋ねられたら、過去の例がいくつもあるものについては「これまではこうだった」と返答できよう。しかし、「日本イスラーム圏友好協会」なる正体不明の団体についてどうか、と尋ねられたら、過去に殆ど例のないものであって返答に窮するのは当然だ。間を置いてから返答するとしても、普通は「まずは支店に全ての資料をお持ちになり改めてご相談下さい」くらいは言うと思うが、電話で「どうしても開設できないのか」などと問い詰めたりすると、信金側としても断りの理由をとりあえず何か言って、電話を切ろうとしても不思議ではないだろう。その際に挙げた理由として「イスラーム」という名では認められません、と答えたとしても、やむを得ないのはないだろうか。


「日本イスラーム圏友好協会」なる団体の不透明さ

これも金融庁からの指導があるはずだが、法人を使うというのがテロ資金や不正資金の常套手段なのである。法人は法人格のある場合やトンネル法人とか、様々な手口があるようだ。また、法人格のない団体の場合であっても不正利用されている例が少なくない為、団体の証明はそれなりの基準に達していることが求められよう。

当方もネットで検索してみたが、当該団体のHPすら発見できなかった。ブログも、である。
また、通常だと団体の存在証明等が求められるのが当然なのであるから、会則だの規約だのとか、会費納入状況とか、それらを資料として提出するだろうし、それでも認められないならNPOみたいな団体にするなり何なりして行政からの文書を用意するといったこともできるだろう。

要するに、電話で、正体不明の団体について、口座開設できるか、といくら問い詰められても、簡単には「できますよ」などとは返答できるはずもなく、それは表層的には「イスラムの表記があるのでダメです」という答えだったとしても、それしか読み取れないのは、あんまりにも沼津信金さんが可哀想なのではないかと。


⑥「日本イスラーム圏友好協会」さんの口座開設よりも信金を守りたい

当事者だったなら、口が裂けても言えないだろうけど、当方が担当者であったならば、そういうことを比較考量してしまうであろう。得体の知れない胡散臭い団体に口座を開設させ、その後も怪しげな資金移動や取引がないかチェックを強いられ、その上金融庁からの厳格な「ご指導」を賜り、半沢チックなら「金ゆーちょー検査よ〜」というのを食らわされるようなことになれば、ヘタすりゃ業務改善命令・業務停止処分等の厳罰が待っているやもしれぬ。
そんな思いをするくらいだったら、危ない橋を渡る必然性などないとしか思えないわけである。

金融機関側としては、少なくとも、「正体明瞭な団体であることの立証をまず開設希望者様がおやりになっていただき、本当に有意義な活動を行う団体ということなら、行政からのお墨付きくらいを取得していただければ、喜んで開設に応じたいと存じます」くらいに思っても当然なのではないのかな、と。
口座開設ができないと断られた団体さんの1口座にはご迷惑をかけてしまって申し訳ないが、その不利益を与えたとしても信金の信用を維持することの方が重要であると判断するのは、そう突飛なこととも思えないですね。


これはあくまで金融機関勤務経験などない、当方の素人考えであり、私見に過ぎないですので、沼津信金さんには何の関係もございません。誹りは当方へどうぞ。


イスラム国という報道での表記があったので、差別や偏見から口座開設拒否、などという妄言を主張することなど当方にはできません。


もうちょっと言いたいことがあるので、それは後ほど。