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【いい国作ろう!「怒りのブログ」】のバックアップです

finalventは詐言で防衛政策を語るべきでない

久しぶりに「極東ブログ」を目にした。
はてブで人気記事だったので、あまりの釣りタイトルが目に飛び込んでしまったのだった。まんまと引っ掛かってしまい、釣られました。
http://b.hatena.ne.jp/entry/finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2015/06/post-d27f.html


finalventは鳩山政権時代の普天間移設問題の時にも、空想世界の出鱈目を滔々と語っていたが、デマ拡散装置としてしか作用しない。そもそも軍事的な常識が欠落しているとしか思えないので、自民広報みたいな真似はやめてほしい。


『安保法制が否定されれば自衛官は死を覚悟して防衛するのだろう』
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2015/06/post-d27f.html


まったく自衛隊に失礼なタイトルだな。
今回の法案の成否に関わらず、もとから自衛官は死を覚悟して任務にあたっていることだろう。いつ何どき、何が起こるか分からない。サマワでもジブチでもゴラン高原でも、危険と隣り合わせだろうし、福島原発事故のようなトンデモない命令だって出されるわけだよ。死を覚悟した者でなければ、務まらないだろう。いや、実際自衛官に尋ねたわけではないから、本当はどうなのか知らないんだけどさ。


法案が否定されたら、あたかも自衛官は死を選らばされるかのような言説は正しくはないだろう。それを、現実無視、と言うのだよ。

以下、具体的にfinalventの信じる「お説」について見てゆくことにする。


1)米軍の輸送艦が日本人を大量に載せて退避する?

戦争映画とか見たことないのか?こんなことを想定する方が、極めて困難。米軍はタクシーじゃないし、民間人の大量輸送は元来想定していない。戦地となっている海域に、丸腰の輸送艦がノコノコ出かけてゆくとでも思っているのか?

イラク戦争の時だって、イラク領内に進攻してゆくまで、何カ月もあったではないか。いきなり戦闘地域になるわけじゃない。民間人の退避時間は、そこそこある、というのが普通だ。
イラン・イラク戦争の時には、日本人が取り残されたが、米軍機なんか日本人を救出するわけもなく、トルコ機が乗せてくれたというのは有名な話だ。かなりの電撃侵攻がないと、国外脱出時間もなく戦争状態に突入したりするのは想定できない。

それに、現代の衛星や情報収集能力を甘く見過ぎており、大規模戦闘の兆候なんてクリミア・ウクライナ問題の時だって、随分と前から戦闘部隊が国境付近に集結しているということは報道されていたではないか。外務省の退避勧告が出る前に戦争に突入する、という想定自体がかなりの絵空事であろうに。


また、たとえ戦闘激化になったとしても、米軍は基本的に日本人民間人を輸送しない。自国民でも具体的利害関係者でもないのに、乗せないよ。
過去において日米安保条約の存在下で、日本人を退避させる為に大量に輸送した実績があったのか?多分、ないね。


唯一例外的なのが、ベトナム戦争時代の国外脱出くらいでは。
ベトナム人を数千〜数万人というオーダーで大量に脱出させた(米国移民は多かった)が、ほぼヘリ→空輸(ピストン)というパターンだったはず。日本人も取り残されていたが、日航機が飛ぶとか飛ばないとかでもめたくらいで、米軍は日本人を運ぶことなどほぼ皆無に等しかっただろう。中には、駐越米国大使館に強力なコネを持つ取材記者たちがいて、そういう人たちは米軍機の空きに乗せてもらったりしたことがあったかもしれない。が、それは例外的であり、日本人の退避は基本的に米軍と無関係である。米軍が撤退してからサイゴン陥落となるまでの時間を利用して、国外退避は実行されたのだよ。米軍撤退までに、民間人を大量に脱出させたわけではなかった、ということである。


2)危険な海域に輸送艦を送り込むバカが米軍にいる?

敵国とやらが米軍の輸送艦を攻撃する、とかって国会などでも言うんだが、それはどんな兵器で攻撃するの?どうやって?

夢物語しか考えられない連中って、昔ながらの艦砲射撃くらいしか思い浮かばないのかもしれないが、現実的に考えてみろよ。
輸送艦を攻撃できる位置に、敵軍の戦闘艦が存在し、なおかつその戦闘艦を攻撃できる位置に自衛艦がいることって、どういう状況だか考えられるか?


まず、敵軍の位置を把握するのは、戦争の基本中の基本なんだから、敵艦が攻撃可能位置にいるのに、わざわざ輸送艦を差し向けたりはしないだろうに。普通は、航路の安全確保が先決だろうに。アホか。そんな無謀な作戦行動あるかっての。

敵艦が例えば100km圏内に存在するなら、攻撃機や対艦ミサイルなどでまず排除すべく攻撃をしてから、輸送船などの移動になるに決まっている。退路を確保できてないのに、死地に向かって突き進むバカはいないだろうに。いちかばちかの博打じゃないんだよ。映画中でも、ピックアップポイントで避難のヘリが迎えに行っても、敵軍の攻撃が激しいとか避難の待ち合わせ時間に間に合わない場合には、迎えのヘリは帰投してしまうだろう。かなりの危険を冒してまで、ピックアップなんてしないんだよ。


だから、米軍の輸送艦が攻撃される範囲内に水上戦闘艦が存在するなら、まずは排除の攻撃が行われるし、退路(航路の安全)確保ができてないのに丸腰輸送艦が簡単に行き来したりはしないだろうよ。

じゃあ、魚雷攻撃だったら、どうなのか?
米軍の輸送艦が魚雷攻撃を受けました!
って、自衛艦はどうやって分かるの?見てるわけ?で、魚雷攻撃をどうやって阻止できるの?
普通は、敵軍が相当のバカじゃない限り、魚雷は命中してしまう。残念ながら、輸送艦は沈む。邦人が乗っていれば、死ぬかもしれません。
攻撃前に、阻止なんかできないじゃないですか。


それとも、輸送艦の大船団でも組んで移動している、とかいう想定ですか?一撃だけでなく、次弾も発射されるよ、と。
そういう場合だと、周辺海域を護衛がついているんじゃないですか?


空からも、海中も、水上も、警戒範囲しか移動しないのでは?
勿論、漏れることがあるかもしれないので、敵潜水艦の攻撃がある可能性はあるでしょう。けれど、輸送艦が攻撃されたら、米軍さえ発見不可能だった潜水艦を自衛艦が攻撃できる場面って、ほぼ皆無に等しいでしょうな。


大前提として、海域の安全が確保されなければ、輸送艦がノコノコと移動して、民間人を大量に運んだりはしない、ということ。


3)実行犯を割り出すのは容易でない

一番、現実的に考えてないのは、結論ありきの「自衛官がまず身を差し出して被弾した後、反撃に移るんだ」とかいう、バカげたことを言う連中である。世界の現実を知らない。というか、無視してるんだよ。

具体的に言うと、例えば、韓国哨戒艦沈没事件の時には、「北朝鮮潜水艇」の仕業とか言われたが、それはあくまで推測でしかないし確定したわけでもないし犯罪捜査みたいに有罪が明らかというものでもない。
また、マレーシア機の謎の撃墜事件の際にも、親露派の対空ミサイル「ブーク」の仕業とか言われたが、米国やその他欧州諸国は証拠も出せないし、本当にウクライナ機の自作自演でないことも証明されていない。

通常の場合だと、潜水艦や戦闘艦が沈没したとしても、具体的に「誰がやったか」なんてものは、証明できないことの方が多いということだ。


では、敵軍潜水艦が民間人を退避させる為の輸送船団に向かって魚雷攻撃を仕掛けている現場を目撃した自衛艦があるとしよう。その敵軍潜水艦を撃沈したとして、誰がどうやって「自衛艦がやった」と証明できるのか、という話だ。

現実を考えろ、というのは、そういうことなんだよ。何も自衛隊が特攻みたいに、まず自ら被弾してからその後に攻撃しろ、というのを絶対的に肯定することではなかろうに。民間人への無差別攻撃はそもそも戦争犯罪なのだから、阻止行動は許容され得るだろう、という話である。


それとも、敵軍の対艦ミサイルを探知したとして、攻撃目標が恐らくは輸送船団であろうと推定できる時、敵ミサイルを撃墜したって、誰がそれを証明できるか?
だから、普通の軍事的行動としては、迎撃しますかと指示を仰がれたら、迷わず「迎撃せよ」となるに決まっている。人命救助が最優先であり、自衛隊の規則がどうか、というのは、その後に政治が解決すべき問題だ。少なくとも、俺が司令官だったら、そう命令するだろう。それが、現実だから、だ。


4)もしも自衛艦の攻撃であることがバレて国際問題になったら

敵水上艦艇からのミサイル攻撃は、ミサイル迎撃が基本であって、敵艦攻撃は原則として米軍の任務である。
潜水艦のような攻撃阻止手段がかなり限定的な場面で、潜水艦を攻撃する以外には輸送船を守れない場合には、正当化され得る。緊急避難の適用と言うしかない。民間人への無差別攻撃(避難民を乗せた輸送船だから、攻撃目標たる軍艦でない)に対する正当防衛か、緊急避難的措置であったと主張可能である。

急迫性は妥当(既に潜水艦からの攻撃が発生しており、猶予がない)、敵潜水艦の不法を問えない場合であっても緊急避難であれば説明可能であろう。それが相手国から認められるとは限らないが。それで解決できない時には、相手国(米軍の敵国)に金銭賠償をするとすればよい。均衡性を問題とされるなら、金しか方法がない。まさか交戦当事国にはなれまい?


これらから考えると、国会での与党説明だとかfinalventの言うような事態というのは、まず「遭遇することが想定困難」という役満(九連とか国士13面待ち)級の非常に稀な事態であり、現実にはほぼ起こり得ない状態であろう。
仮に起こった場合であっても、大義名分は立つこと、全くの説明不能な状態ではないこと、とは思う。


某国より核ミサイル発射を探知
 →自衛隊が迎撃可能体制にあり
 →迎撃指示を仰ぎ「迎撃実行」
 →某国が核ミサイルは日本により撃墜された証拠を提出

こうなったとして、日本の言い分として見れば

・核ミサイル探知後、日本国内への攻撃と判断した
・故に、個別的自衛権行使で迎撃したものである

と説明すれば、何らの問題もない。
第一、核ミサイル発射が正当化され、国際社会で支持を得られるという方が、極めて想定しにくいだろう。
日本の迎撃行為は英雄的と賞賛されど、非難を浴びる方が少なかろう。


で、某国が納得できない、となった場合、
「じゃあ、どこを攻撃目標としたんですか?」→「米国です」
ってなったら、米国がマジギレで某国はメッタ打ちに粉砕されるだろうに。



※ちょっと追加:6/28

(過去の経験則からすると、米軍って、基本的に報復空爆とか、ものすごく簡単に実行しているよね?誰からも非難されないからって、違法だろうと何だろうとおかまいなしに、倍返しの攻撃をしてきたでしょう?
reprisalなんて、いまどき国際法上で認められてないと思うけど、やってるよね?

イスラム国への報復空爆でも同じで、復仇という名目でシリア空爆を繰り返したでしょう?
ああいうのも、米軍の「やれ、やっていいぞ、もっとどんどんやれ」という教えや応援がなければ、普通はやってこなかったことなんですよ。)



それを恐れて、じゃあどこを攻撃したんですか?→日本です、だったら、別に集団的自衛権の有無は関係なく迎撃できるではないか。
また、発射地点不明の迎撃ミサイルが衝突した、ということが画像上で証明できたとしても、発射した国がどこの誰なのかを確定させない限り、文句の言いようがないわけで。
finalvent的には、それらが「神の視点」の如く、犯人もぜーんぶお見通しだぁ〜ということを前提としているのだな。


今回の法案が通らないからといって、自衛隊員が敵の前に飛び出して被弾し命の犠牲を払え、などという非現実的要求はあろうはずもないのだよ。いつもなら、国民に対して無駄に言い訳能力を発揮しているのだから、こういう時にこそその能力を活かせばいいだろうに(笑)。
行政組織なんて、常々脱法行為を散々やってきているのに、こういう時だけ遵法精神で何故か四角四面の杓子定規な硬直的解釈だけを出すのは、ご都合主義というものだよ。

愚かの極み。