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玉井克哉東大教授の珍説〜電力事業者は「原発を自発的に停止できない」

遂に、ここまで来ましたか。行政法のプロを自認する方が、驚くべき解釈を提示しているようです。


https://twitter.com/tamai1961/status/721969289612242944

(法律の学生向け)原子力発電所の運転を電気事業者が「自発的に」停止することなどできないということについて。電気事業法6条2項4号イ、同9条1項、同3項、同法施行規則10条1項ロ。こういう条文を10分以内に探し当てることができれば、セミプロ級といえる。


全くもって意味不明なのだが、電力事業者は自分たちの判断で原発を停止できないなら、一体全体誰が停止させられるというのだね?(笑)
プラントのどこかに不具合とかが発生したら、普通に事業者が停止するでしょうに。それすら許されないというのなら、あれですか、原子力規制委員会が一から十まで全部命令するとでも?


全く、何を言ってるんだか。東大の法学ってのは、こんなもんなんですかね?


参考までに、改正前の電気事業法についての記事は拙ブログでも幾度か取り上げたことがあります。

こんなのとか
2014年1月>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/8da760d94d6e08b3bcd32f30c09ab5b5


全く法学の先生方ってのは、あてにならんな、とかの昔話はとりあえずおいといて。

今回の電気事業者が発電設備を運転したり停止したりするというのを、自発的にできない、などという解釈は全く成り立ちませんね。妄言に等しいでしょう。電気事業法6条事項の変更届出が9条に規定されている、というだけであって、原発に限らず、火力だろうと水力だろうと、どの設備を稼働させ発電するか、どれを停止させ点検に回すか、といったことは、ある程度の自由裁量が電気事業者に認められているに決まっているでしょうに。これが電気事業者は「自発的に停止できない」などとする根拠は条文から読み取ることなど不可能でしょう。


因みに、玉井教授の暴論を知る前から、当方も電気事業法を読み返していたのですが、その理由というのは川内原発を停止するよう大臣権限で要請できる根拠条文があるかどうか、という点を探したかったから、です。


結論からすると、経産大臣は直接的な停止命令権限を発動するというのは、あまり明確ではない、ということですね。これは想定された通りでした。が、完全否定かといえば、必ずしもそうでもないかもしれない、とは思えます。


(1)原発の主務大臣は経産大臣

基本的な原則というのは、原子力規制委員会の権限が主要なものとなっていますが、電気事業者への所管という観点からすると、主務大臣は依然として経済産業大臣である、ということです。

電気事業法 第百十三条の二  
この法律(第六十五条第三項及び第五項を除く。)における主務大臣は、次の各号に掲げる事項の区分に応じ、当該各号に定める大臣又は委員会とする。
一  原子力発電工作物に関する事項 原子力規制委員会及び経済産業大臣
二  前号に掲げる事項以外の事項 経済産業大臣

1項1号にある通り、原子力発電工作物に関しては、規制委員会と経産大臣の並立ということになっています。従って「主務大臣である」と言うことは間違いではないし、依然としてそう主張することもできる、ということです。


(2)経産大臣権限(命令)は一般電気事業者に及ぶ

主要な監督権限というのは、原則として原子力規制委員会ということですけれども、場合により経産大臣からの命令があり得ないわけではない、という根拠を条文で示します。


電気事業法 第三十条  
経済産業大臣は、事故により電気の供給に支障を生じている場合に電気事業者がその支障を除去するために必要な修理その他の措置を速やかに行わないとき、その他電気事業の運営が適切でないため、電気の使用者の利益を阻害していると認めるときは、電気事業者に対し、その電気事業の運営の改善に必要な措置をとることを命ずることができる。


ここで言う、「その他電気事業の運営が適切でないため、電気の使用者の利益を阻害していると認めるとき」に該当していれば、必要な措置を命ずることができます。九州の場合では、どういうことが考えられるか?
例えば、外部電源喪失となる可能性が十分想定されている時、川内原発が自動停止条件に現状では至っていなくとも、近々自動停止してしまう虞がある場合、です。なおかつ、その停止により代替供給余力が充足できない可能性が高いなら、自動停止に至る前に供給力の計画から落として、中国電力中部電力や関電に広域融通を事前に計画に入れさせておく、という措置を命じるような場合です。


原発が緊急停止して178万kWの供給力が一気に脱落し、その瞬間から急いで手当するより、事前に織り込んで対策を講じておく方が電気使用者利益を阻害せずに済む、ということが考えられる場合です。通常であれば、原発が緊急停止しても(実際今年にも電力供給が途絶えたことがあった)、供給余力が自管内で確保されていることが多いですが、今回のような地震発生では原発以外の同時停止もあり得るから、ですね。


九電に対する電気事業の運営に関する措置命令は、こうした発電施設の稼働や他電力会社との融通をも含むと考えるのが妥当ではないかな、と。


別な条文も挙げてみます。

電気事業法 第三十一条  
経済産業大臣は、電気の安定供給の確保に支障が生じ、又は生ずるおそれがある場合において公共の利益を確保するため特に必要があり、かつ、適切であると認めるときは電気事業者に対し、次の事項を命ずることができる。ただし、第三号の事項は、卸電気事業者に対しては、命ずることができない。
一  一般電気事業者、特定電気事業者又は特定規模電気事業者に電気を供給すること。
二  電気事業者に振替供給を行うこと。
三  電気事業者から電気の供給を受けること。
四  電気事業者に電気工作物を貸し渡し、若しくは電気事業者から電気工作物を借り受け、又は電気事業者と電気工作物を共用すること。
五  前各号に掲げるもののほか、広域的運営による電気の安定供給の確保を図るために必要な措置をとること。


この5号規定が使えるのではないかな、と。
すなわち、電気の安定供給の確保に支障を生じるおそれがある場合、「電気の安定供給の確保を図る」ために必要な措置をとることを「命ずることができる」ということです。公益の必要性と措置命令が適切である、という条件が必要ですけれども、前記のように説明が可能ではないかと考えます。


以上から、主務大臣は経産大臣であること、場合により措置命令は発動可能であること、というのが、拙ブログでの考え方です。措置命令については、裁量の余地があるものであり、見解の相違はあると思いますが、発電施設の運転・停止や広域融通を含むというのは、無理筋とは思いません。


話が戻りますが、玉井教授の見解は全く違うとしか思えないですね。

プロがこれで恥ずかしくはないのでしょうか?
意味がわかりません。


20日追記:

まとめができていたようです。

>>http://togetter.com/li/964467


東大の教授って、どういう感覚でこういう妄言を吐くんだろうね(笑)。一般常識的に考えれば、普通に分かることを、わざわざ解説付きで全然成り立たない解釈を大上段からぶってくるって、全く意味不明。


玉井曰く、『電気事業法上は原子力も火力も水力も「電気工作物」なので、いま挙げた条文は原子力に限らない。この辺も、基本がわかってないと感覚的につかめない』ってさ。


勿論、そんな玉井教授みたいな、感覚を持ってるわけないですよ。だって、そんな解釈はどう逆立ちしたって、出て来ませんもの。こういう解釈を発明できる玉井教授の「感覚」ってのが、信じられませんわ。


で、『20日以内に経済産業大臣が判断する仕組みになっていて、事業者の「自主的な」判断がすぐに実現しないようになっている。この辺、事前規制から事後規制への転換を(建前上は)図りつつ主務大臣の介入権限を残す、苦心の立法。』だと?


オイオイ、事業者の自主的判断が「すぐに実現しないようになっている」って、日々の電力供給の調節をどうやるのだね?
届出して、20日以内の判断を仰いでから、実現してるって?(笑)


寝言にもならないですね。
東大教授もこんなザマ、霞が関官僚集団の杜撰な法解釈といい、日本は危機的状況だなと実感できるわ。