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原発停止の法的根拠について

昨日の記事でいくつかの見解を述べたが、もう少し考えてみたので、追加しておきたい。

まず環境影響評価法についてだが、この施行令を読むのが後になってしまって、どうも適用が難しいだろうということに気づいた。なので、散々書いてみた後の終わりの方でその旨を書いたわけである。

電気事業法29条届出に関して、原子炉等規制法の方で停止要件になっているかどうかを見たのだが、これも該当してはいないように思われた。


そこで、観点をもう少し変えて考えてみた。

カギとなる条文は、やはり原子炉等規制法である。

○原子炉等規制法 第35条

原子炉設置者及び外国原子力船運航者は、次の事項について、主務省令(外国原子力船運航者にあつては、国土交通省令)で定めるところにより、保安のために必要な措置を講じなければならない。
 一  原子炉施設の保全
 二  原子炉の運転
 三  核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の運搬、貯蔵又は廃棄(運搬及び廃棄にあつては、原子炉施設を設置した工場又は事業所(原子力船を含む。次項において同じ。)において行われる運搬又は廃棄に限る。次条第一項において同じ。)

2  原子炉設置者及び外国原子力船運航者は、原子炉施設を設置した工場又は事業所において特定核燃料物質を取り扱う場合で政令で定める場合には、主務省令(外国原子力船運航者にあつては、国土交通省令)で定めるところにより、防護措置を講じなければならない。


この条文を非常に簡単に言うと、第1項が保安に必要な措置義務があること、第2項が防護措置義務があること、である。

そして、この35条1項規定違反の場合には、停止命令が可能、ということになっているのが、次の36条である。


○原子炉等規制法 第36条

主務大臣(外国原子力船運航者については、国土交通大臣)は、原子炉施設の性能が第二十九条第二項の技術上の基準に適合していないと認めるとき、又は原子炉施設の保全、原子炉の運転若しくは核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物の運搬、貯蔵若しくは廃棄に関する措置が前条第一項の規定に基づく主務省令又は国土交通省令の規定に違反していると認めるときは、原子炉設置者又は外国原子力船運航者に対し、原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。

2  主務大臣(外国原子力船運航者については、国土交通大臣)は、防護措置が前条第二項の規定に基づく主務省令又は国土交通省令の規定に違反していると認めるときは、原子炉設置者又は外国原子力船運航者に対し、是正措置等を命ずることができる。


条文からすると、35条1項規定の主務省令・国土交通省令違反の場合には、

原子炉施設の使用停止、改造、修理、移転、原子炉運転方法の指定、その他保安上必要措置を命令できる

ということである。
命令を出す主務大臣は本件の場合だと経産省大臣となるが、文部科学省所管施設であれば文科大臣ということになる。外国船(主に米国原潜や原子力空母などだ)であれば国土交通大臣となる。


36条1項の要件をもう一度書くと、
①技術基準不適合
②原子炉施設保全の違反
③原子炉運転の違反
④核燃料の運搬・貯蔵・廃棄措置の違反
⑤核燃料汚染物の運搬・貯蔵・廃棄措置の違反
がある時には、使用停止などの命令ができる、ということである。


で、省令を見ると次のようになっている。

○実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則 7条の5

法第三十五条第一項 の規定により、原子炉設置者は、十年を超えない期間ごとに、原子炉ごとに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一  原子炉施設における保安活動の実施の状況を評価すること。
二  原子炉施設における保安活動への最新の技術的知見の反映状況を評価すること。

2  略


この第1項2号の「最新の技術的知見の反映状況」という要件が満たされているか、という問題が存在する。それは、福島原発事故の原因分析という点においても、津波ばかりではなく、地震の影響が正しく分析されているかどうかという問題あるからである。原因解明が未解決である現時点では、最新の技術的知見が反映されているとは言い難いのではないか。

また、次のような規定がある。

○実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則 7条の3の7

品質保証計画における保安活動の改善に関する事項は、次に掲げる事項とする。
一  不適合に対する再発防止のために行う是正に関する処置(以下「是正処置」という。)に関する手順(第十九条の十七各号に掲げる事故故障等の事象その他が発生した根本的な原因を究明するために行う分析(以下「根本原因分析」という。)の手順を含む。)を確立して行うこと。
二  生じるおそれのある不適合を防止するための予防に関する処置(以下「予防処置」という。)に関する手順(根本原因分析の手順を含む。)を確立して行うこと。
三  予防処置に当たつては、自らの原子炉施設における保安活動の実施によつて得られた知見のみならず他の施設から得られた知見を適切に反映すること。
四  前条の評価結果を適切に反映すること。

簡単に言うと、事故などの事象について根本原因分析をせよ、予防処置をせよ、他施設の知見も予防処置に反映せよ、ということである。これが達成されているだろうか?

更に、前記第7条の5にあった、最新の知見を反映して措置を行ったら、品質保証計画の改善なども必要になる、ということがある。

○実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則 7条の3

法第三十五条第一項 の規定により、原子炉設置者は、保安規定に基づき品質保証計画を定め、これに基づき保安活動(第八条から第十五条までに規定する措置を含む。)の計画、実施、評価及び改善を行うとともに、品質保証計画の改善を継続して行わなければならない。

2  原子炉設置者は、第七条の五第一項の規定に基づく措置を講じたときは、同項各号に掲げる評価の結果を踏まえて前項の措置を講じなければならない。


これらが正しく実施されていない、ということになると、原子炉等規制法35条1項違反、すなわち36条1項の適用となり、原子炉施設の使用停止命令が主務大臣より出せる、ということになるわけである。
原発停止の法的根拠は存在しうる、ということである。


省令改正は昨年の12月となっているので、浜岡原発停止の時点での条文がどうであったのか正確には知らないが、電源喪失対策などの基準が変更されたものと思うがどうであろうか。品質保証規定や定期評価規定が変更されたとも思えないのだが。

35条1項違反が存在すると、36条適用で使用停止命令は可能、と解釈・適用してよいのではないか。