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最低賃金に関する議論〜6 大竹文雄阪大教授の空疎な議論

上限金利規制の時にも、大竹先生のご意見には、疑問点が尽きなかったわけだが。
最低賃金についても、やはり同様であり、この人は基本的にデータを見て考える、ということがないのだろうか?


http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/13j014.pdf


中身はお読み下さればと思いますが、海外の実証分析に関する論文については、非常に参考になります。これは素直に、勉強になり、有難うございます。ですが、では、実際に、日本での現象面ではどうなのかな、という点について、何らの有益な考察というものがないわけです。まさに、机上の空論的な、中身のない論が提示されているわけです。


ええ、ええ、分かりますよ、経済学ですよね、経済学。
経済学の基本的な思考パターンを知るにはいいのかもしれませんが、研究をするべき経済学の人があまりに貧弱であり、何も分からないに等しいでしょうね。いつまで、こういう「経済学の屁理屈」を振り回すだけのレベルに甘んじる積りなのでしょう?


多くの国民にとって、求めているのは現実の処方箋であり、それは政策レベルに乗せるものでしょう。こんな現実の議論に耐えられない論を提示して満足しているだけの経済学研究とは、一体何なのでしょう?


何と言うか、バカバカしいと言いたくなる気分です。最低賃金を引き上げると、雇用が失われる、と。その論はどの程度正しいのか、自覚したことがあるのでしょうか?

ならば、実証分析でもやって、もっと有効な政策論を出せばよいのでは?
それすらもできない、というのに、主張している自説の正しささえも、満足に示せてないのでは?


これが、日本の経済学の第一人者とか、経済学の最前線?とかなのでしょうか。


まず、日本の最低賃金は、長期的かつ持続的に引き上げられてきました。ならば、経済学者は「低賃金層の雇用が失われたんだ」と主張するんでしょうかね?それなら、最低賃金付近の労働者数は激減したのではないですか?


http://www.fukuho-tokyo.jp/bt/updata/bt_20150729151219.pdf

東京都を例に見れば、03年の708円から、うなぎ上りに上がったんじゃありませんか?
最近だと、15年は907円、16年には932円と引き上げられてますが?

932円なら、03年の約31.6%増となりますね。すると、経済学者の弁を借りれば、雇用が失われるんだと。本当ですか?

常識すらないのでしょうか?
所謂、パートやアルバイトなどの非正規雇用者数は、増加の一途だったのではありませんか?(派遣、契約、嘱託も含むが)

正規雇用の人たちは、大抵の場合、最低賃金よりも高い水準のことが多いでしょう。なら、最低賃金が適用されがちなのは、まさしくこれらの非正規雇用者たちなのでは?


http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000120286.pdf

正規雇用は、この資料によれば、04年の1564万人から、2016年の2016万人に大幅に増加してますね。年号と同じですね、偶然。憶えやすいかも。
大竹教授は、長期変化を見るのが大事だ、と言っていたわけですが、03年から論説を書いた13年まで見たって同じ傾向であることは、簡単に分かるでしょう。それを確認することも、自分のお説が妥当なのかどうかを検討することさえも、できないのでしょうか。

話を戻しますが、04年から16年では452万人増加しているわけです。パートやアルバイトの比率が年毎には分からないですが、直近の昨年だとパート984万人、アルバイト414万人で合計1398万人で非正規雇用の約7割です。907円から932円と大幅に引き上げられたにも関わらず、前年よりパート、アルバイトは32万人も増加しているわけです。

この長期トレンドはほぼ変わらないでしょう。パートは増えているということですよ。恐らく、最低賃金に影響されがちな層ということです。


だとすると、最低賃金が持続的に引き上げられてきたのに、パートやアルバイトが激減するかと思いきや、全く逆で連続して増加しているではありませんか。これを、どう説明するのです?大竹教授は。


新卒採用でも似てますね。
賃金が増加したからといって、雇用者数が減らされるというわけでもありますまい。


全体調査ではないですが、民間求人の動向がわかります
  >http://www.works-i.com/pdf/160421_kyuujin.pdf


例えば、安倍政権後の求人倍率は回復してますが、初任給は上がってますね。それより、少し前のグラフとかも。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/16/dl/02.pdf
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/12/01.html


これらデータから窺われることは、大竹教授の主張がどれほど正しいのか、かえって、かなり疑問である、ということです。


日本の経済学というのは、基本的に「よく考えてみる」ということがないのでしょうか?


拙ブログの想定する理由というのは、違ったものですね。

正規雇用が減って、非正規雇用を増やす、というのは、企業行動としては、「経費負担を減らす」と考えれば妥当なものです。人件費は、社会保障負担や退職金・企業年金も含めて考えると、正規雇用というのはかなりの大きな負担となるでしょう。しかも、政策的に、厚生年金の料率引き上げや健康保険も同じく料率(健保組合負担)引き上げが行われたきたわけですから、それをできるだけ回避したいということです。

よって、非正規雇用の増加は、正規雇用者の代替という部分が大きかったものと思います。だからといって、最低賃金が上がるので雇用量を減らす、という動機に必ずしも結び付かないのではないかと思えます。

影響を受けやすいと想定されるのは、、零細でどうにかやっている会社とか個人経営でバイトを少し置いてるような店とかではないかと思いますが、その程度の賃金増加に耐えられないなら、退出するのもやむを得ないのではないかと。倒産理由で、人件費増加を挙げている例はそう多くはなかったと思います。勿論、経費増加のうち人件費は小さくはないですが、基本的には売上減少(=市場の需要不足)、みたいなものが多かったのではないかと。売上が大幅に落ち込むから、人件費が払えなくなり、その他費用も払えず廃業に至る、ということで、人件費高騰のせいで、同じだけ売上があったのに経営が立ちゆかなくなる、というケースは割と少ないのでは。


最低賃金の引き上げはあったものの、社会全体で見れば、失われた「企業負担」(例えば支給する賃金と社会保障負担分)はずっと大きく、引き上げ効果よりも、喪失の影響度の方が大きかったかもしれない、ということです。生涯賃金の差、とか言われてたと思いますが、そういう違い、ということであり、それは最低賃金引き上げくらいでは、到底埋め合わせることができない程の開き、という意味です。


これで、最低賃金の引き上げさえなかったら、弱い立場の労働者がかなり不利に追い込まれていたはずで、経済学者の言う「机上の経済学理論」での損失云々のレベルではないと思いますね。


参考までに、日本の物価水準を理解する上で、役に立つかも。ビッグマック指数
http://ecodb.net/ranking/bigmac_index.html


為替水準云々ではなく、日本が、韓国やタイよりも下位に位置しているんだ、ということは、とても参考になる、という意味です。


日本の経済学がダメな理由、それは、満足に検討もできず、自力で自分の主張が妥当かどうかさえ考える能力を欠いているから、ではないでしょうか?


そうではない、というなら、経済学の理屈の上で、答えを出すよう努力すべきですね。何の為の学問なのでしょう?